※写真はイメージです(GettyImages)
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 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、在宅時間が増えたことを背景に、住民間の騒音トラブルが全国で相次いでいる。もし巻き込まれてしまった場合、どのような対応を取るのが正解なのか。マンション管理士の資格を有する桑田英隆弁護士に、コロナ禍で増えている騒音トラブルへの対処法を解説してもらった。(清談社 山田剛志)

■分譲マンションの管理会社は住民間トラブルに介入しなくてもよい

 騒音に関するもめ事はマンションなどの集合住宅には付き物。夜遅くに隣の部屋から聞こえてくる笑い声や上階から響く足音など、苦情の対象となる騒音には多くのパターンがあるが、桑田氏がこれまでに相談を受けた騒音に関する苦情のおよそ8割は、上下階の住人間で起こっているという。

「下の階の住民が上の階から響く騒音に悩まされるといった事例が大半を占めています。足音が問題になることもあれば、ドアの開閉音、重い物を落とした際に生じる音まで種類はさまざま。騒音が原因でノイローゼに陥り、社会生活が困難になるといったケースもしばしば生じています」

 近所から発せられる騒音によって心身に不調が生じる前に、何らかの手を打っておきたいところだが、まずはどこに相談するべきなのか。

「マンションにお住まいの場合、建物の管理会社に連絡するといいでしょう。ただし、管理会社はあくまでエレベーターや廊下といった共用部分の維持管理などを受託しており、住民間のトラブルの解決は求められていません。従って、管理会社の対応は騒音防止の注意喚起の張り紙を共用部分に掲示する、といったアプローチにとどまることも多いです。騒音の発生源となっている住人に直接注意を促す、といった役割までは期待できないのです」

■騒音主に直接クレームはさらなるトラブルを招くリスクも

 分譲マンションの場合は区分所有者(分譲マンションの購入者)で構成される管理組合があり、管理組合の理事長による直接の対応を求めることもある。組合によっては当事者双方から話を聞き出し、仲裁に向けて尽力してくれるケースもあるだろう。だが、組合も原則としては住民同士のトラブルに関与する必要はなく、解決のために動いてくれないところも多い。

 管理会社による張り紙での注意喚起に効果がない場合、騒音主の元を訪れて、直々にクレームを入れたくなるもの。しかし、その場合は二次被害を受ける危険性があり、格別の注意を払う必要があるという。

「ご近所付き合いは長く続きますから、騒音トラブルは穏便に収めるのがベスト。しかし、騒音主に直接苦情を告げるような場面で冷静でいられる人は少なく、手紙を出すにしてもついつい攻撃的な文言になってしまいがちです。また、騒音を出す人にはタチの悪いタイプも多く、クレームを言いに行って暴力を振るわれるなど、警察沙汰につながるリスクもあります。とはいえ、直接話し合いを持ちかけることが全てダメというわけではなく、相手方の素性がある程度わかっていて、ヒートアップせずに伝えるべきことをしっかり告げることができれば有効な手段となることもあります。その際は『なんとかなりませんか』という形で、あくまで穏やかに掛け合ってみるといいでしょう」

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弁護士へ相談する際の 事前準備と注意点