子どもが小さいときから、何でもやらせるっていうのもすごいと思いました。ジャネットさんは1歳1ヵ月で泳げるようになったそうですけど、そんなに小さいうちからプールに入れちゃうんです。

 それから、1つポイントだと思うのは、エスターさんが自分の弱みをさらけだせることです。「自分はこういうダメな人間なので、協力してください」と言える。スーザンさんに小さいうちから助けを求めていて、スーザンさんはお母さんを助けることに誇りを持っていたそうです。

 生徒に対しても「静かにしてくれないと、私がクビになっちゃうからお願い」なんて言って、上手に巻き込んで一緒に成長していきました。これも、なかなかできないことだと思います。いい関係だなあと思いました。

■【その3】「優しさ」「利他の心」を育てる

加藤 3つめの「優しさ」は、エスターさんご自身が利他の精神を持っていて、実践しているところが印象に残っています。

 たとえば「グリット=やり抜く力」の大切さは近年注目されていますが、エスターさんは「やり抜く力のいちばん大切な面は、それが人や社会のためになるというところだ」とおっしゃっています。

 やり抜く力は個人の資質として見られがちだけれども、それが社会を変える力になるというんですね。個人として成功する、競争に勝つという考え方ではないんです。

 でも、多くの親は子どもに対して「勝ち組になってほしい」というような気持ちを持っていて、つい「負けるな」「競争に勝て」と教えてしまっているのではないでしょうか。

 エスターさんが指摘しているように、「自分が勝ちたい」だけでは、やる気や主体性にも限界があると思います。「利他の精神」や「人を思いやる力」「人のためにという考え方」をしっかりと教えてあげるほうが、長い目で見て成功するように思うんです。地球全体で見れば、自己中心的な考え方では共倒れになってしまいますよね。