関 エスターさんとエイミーさんの討論は全然かみあっていないのですが、エイミーさんはエイミーさんですごいんですよ。子どもの能力を心底信じているからこそ、それをフルに開花させてあげなければと、ああやって厳しく接していると思うんです。
加藤 なるほど。やみくもに「親の言うことを聞け」ということではないんですね。
関 エイミーさんのお子さんも、とても立派に育っています。だから、どちらも子どもをリスペクトしているけれど、方法が違うんでしょうね。
基本的に子育てって、自分が育てられたようにしかできないじゃないですか。エイミーさんは、自分がスパルタ式で育てられてきて、いまはハッピーだから同じようにしているんだと思うんです。
でも、エスターさんは自分の親とは違う育て方をしようと決めて、苦労しながらやってきました。ただ自分が育てられた子育て法をなぞるのではなく、自分の体験を振り返りながらも、一つずつ調べて、考えて、「TRICK」という教育法に至りました。
■【その2】子どもをとことん「信頼」する
加藤 2つめの「信頼」ですが、エスターさんの子どもへの信頼が突き抜けていて、すごいんです。名門イェール大学を出た三女のアンさんは、「ベビーシッターになりたい」と言い出しました。バイオテック投資部門の仕事を断ってまで、ベビーシッターになりたいと。
もちろんそれが悪いわけじゃないけれど、私だったら口出ししない自信がありません。
長女のスーザンさんも大学を卒業するなりふらっとインドに行っちゃったり、次女のジャネットさんもケニアで狂犬にかまれたり、アンさんはロシアを横断するひとり旅で何ヵ月も消息不明になったりと、びっくりするようなエピソードがたくさんありました。
「え、就職しないの? そんな危険なことをするの?」なんて、日本的な感覚でつい言ってしまいそうです。
関 口出ししないと決めていたんでしょうね。本当は、こっちの選択肢にしてほしいとか、いろいろあると思います。それをぐっと我慢して、信頼しようと決めて、言わずにいる。忍耐力が必要ですね。