■Tさん一家の家計は使途不明金まみれで危険?

 今回は、働くことが嫌いな50代男性、Tさんからのご相談です。20代の頃から早期リタイアを目指し、不労所得の強化を15年間行ってきたとのこと。早速、早期リタイアが可能かどうかを見ていきましょう。

 Tさん一家は、現在夫婦共に51歳。2人の息子は長男が社会人、次男が大学3年生です。月間の収支を確認すると、収入はTさんが手取り70万円、奥様が28万円、不動産収入が40万円です。この収入には夫婦共にボーナスも含まれており、月間合計が138万円です。年間では138万円×12カ月=1656万円になります。

  Tさんは家計簿のような細かい支出を考えるのが昔から性に合わないとのことで、家計簿代わりに家計のバランスシートを作成して家計管理を行っています。

 少々話がそれますが、家計管理に関しては必ずしも細かな支出まで把握する必要はありません。また家計簿を必ずつけなければならないわけでもありません。使途不明金があまりなく、毎月きちっと貯蓄(資産形成を含む)ができてさえいれば何ら問題ないのです。

 では、話をTさん一家の支出に戻しましょう。年間支出は生活費の900万円と、お子さんの大学の授業料等を含む教育費180万円を合わせた1080万円です。

 なお、生活費には固定資産税や自動車税、ゴルフ代などが含まれています。貯蓄は年間360万円と記載があります。しかし、年間収入1656万円から支出1080万円を差し引くと本来は576万円の貯蓄ができるはずです。相談文に記載されている貯蓄は360万円ですから、216万円の使途不明金があることになります。

 改めて相談文の貯蓄の欄を見ると、「自動車関連費やゴルフ代で支出が大幅に超過すると、年間貯蓄を使用」と書かれています。さらに、「60歳までにこれから積み上げられる金融資産は、2500万円くらいに留まるかもしれない」とも書かれています。

 Tさんは現在51歳です。記載通り年間360万円を貯蓄した場合は、60歳までの9年間では360万円×9年=3240万円の貯蓄ができるはずです。さらに、本来であれば大学3年生の次男が卒業して以降は教育費180万円が浮くはずなので、追加で180万円×8年間=1440万円の貯蓄も可能でしょう。

 それが、もし2500万円の貯金に留まった場合は、3240万円+1440万円−2500万円=2180万円を使ってしまったという計算になります。これも使途不明金として計上しましょう。

 先ほども触れたように、貯蓄が想定どおり年間360万円の場合でも、使途不明金が216万円ある状態でした。9年分では216万円×9年=1944万円ですね。つまり、9年間の使途不明金は2180万円+1944万円=4124万円にまで膨れ上がる計算になります。これだけの巨額のお金がダダ洩れ状態で使われてしまう可能性があります。

 金銭に余裕があるのであれば、今のような家計管理でも構いません。しかし、ご希望通り早期リタイアをしたいのであれば、決して看過できる金額ではありません。

 苦言を呈するようですが、早期リタイアを行うのであれば家計管理の観点からぜひ改めていただきたいと思います。早期リタイアをいつするべきか?そして、不動産を手放すベストなタイミングはいつなのか?三つのケースに分けて確認していきましょう。

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ケース(1)Tさんが52歳でリタイアした場合