■知っておくべき注意点

 当初、使いやすそうな制度に思えたのですが、実際の手続きには、法定相続分を明らかにするために、亡くなった方の出生から死亡時までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本が必要です。申請してから振込までに2週間以上かかる銀行もあるので、葬儀費用に充てるには間に合わないですね。

 ただ、葬儀費用のためではなく、当面の生活費の確保のためということであれば、とても有効な制度と言えます。

 なお、この払戻したお金を葬儀費用に充てる場合はいいのですが、もしも、相続人の自分の生活費に使った場合には、相続放棄ができなくなってしまいます。そういった面でも、この制度の利用は慎重に考えなければいけないですね。

 ちなみに、ちょっと悲しい話ですが、葬儀費用を誰が負担すべきかを争った裁判は過去にいくつかあります。裁判の結果、(1)相続前から葬儀社との間で負担者が決まっていた場合にはその人、(2)相続人の話し合いで負担者が決まればその人、(3)話し合いで決着がつかない場合には、喪主負担とすることが通例となっています。

 このあたりの知識も持っておいて損することはないですね。

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相続争いの大半は「普通の家庭」で起きています