写真はイメージ(GettyImages)
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 エンジニアなど技術畑の人には、ゲームやアニメ好きが多いというイメージがあるが、マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「ゲームに苦手意識があった」と明かす。しかし最近「理解できないものを否定するのは老害そのもの」と気づいたという及川氏が、年長者や企業の役職者がいつでも新鮮な情報を入れ続けられる人でいるために大事にすべきポイントを語る。

■大ヒットゲームやアニメにハマれないのは自分の方に問題がある?

 私事で恐縮ですが、私は技術畑の人間としては珍しく、長い間「ゲームは時間の無駄だ」と思って生きてきました。また、アニメにも興味がありません。そして、ゲームやアニメに自分が興味を持てないことに、これまで特に疑問を感じずにいました。

 ゲームもアニメも、世間的には「積極的にやらなくていいもの・見なくてもいいもの」であり、むしろ「時間を費やしすぎると、本来やるべきことがおろそかになる」と考えられています。私ももともと否定的な見方の持ち主で、電車などでスマホゲームに熱中する人を見ると「読書もせず、ゲームに夢中になって、日本人はどんどん頭が悪くなっていくのではないだろうか」などと思っていたものです。

 また、その読書についても、「薄くて図版ばかりのビジネス書など、書店で30分立ち読みすれば読み終えてしまうような本には価値がない」と考えていました。自分で本を出すときにも、ある程度の文字量がなくてはいけない、と思うほど、こだわりを持っていたのです。

 ところがあるとき、「多くの人がはまっているものには、何らかの理由があるのではないか」と思い始め、こうした自分の考え方を疑うようになりました。最近のブームで言えば、アニメ・漫画の「鬼滅の刃」や「あつ森」こと、Nintendo Switchのゲーム「あつまれ どうぶつの森」などのコンテンツは、無視してはいけないのではないかと感じるようになったのです。

 実を言うと、こうした大ヒット作については「知らないと仕事で困る」という場面も出てきています。なぜなら、ビジネスの説明などでメタファー的に使われることも多いからです。例えば「これは『あつ森』の世界観で……」「『キングダム』で言えば……」「『ガンダム』で例えると……」といった具合に説明を受けると、私には理解できないということが圧倒的に多いのです。

 こうした説明をする方々はもちろん“頭が悪い”などということはなく、皆さん、しっかりとしたビジネスパーソンです。そこで「これは、こういうヒット作にハマれない自分の方に、何らかの問題があるのではないか」と考えるようになりました。

 ものは試しということで、つい最近、Switchを手に入れて、あつ森をやってみるようになりましたが、まだ「ハマる」というところまではいっていません。「あー、そろそろあつ森やらなきゃ」と言っている私を見た娘には、「こういうものは『やらなきゃいけない』んじゃなくて、『やりたいから早く仕事を終わらせよう』と思うものなのに」とツッコミを入れられ、あきれられています。ただ、何となく、多少は面白みが分かるようになってきました。

 息子は息子で「Switchを買ったのなら」ということで、休暇の折に「マリオカート」や「スマブラ(大乱闘スマッシュブラザーズ)」といったゲームを持って来てくれました。一緒にやってみると、自分が若い頃、反射神経が悪くてこういったゲームに苦手意識を持つようになったことを思い出しましたが、今になってやってみると「下手は下手なりに楽しく遊べるようにできているものなんだな」と感じました。

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苦手意識から理解できないものを否定していないか