これらの支出を整理するために、まずテレワーク関連の支出は別立てにしておくといい。国税庁が在宅勤務費用負担への課税方針を出したことで、企業は手当等を出しやすくなるのではともいわれている。電気代や通信費の一部が経費に認められれば家計も助かるし、いまだ企業側の支給体制が整っていなくてもテレワークにかかった機器代や通信費などをまとめておくと、後々役立つかもしれない。

 そのほか、家で楽しむためのグッズ購入費は「巣ごもりレジャー代」とまとめてもいいだろうし、健康維持や美容にかかる費用の項目を立ててもいい。デリバリー代は食費とは別立てに費目を立てて月にどのくらい利用しているかを把握し、使いすぎないよう一定の予算の枠を決めておこう。なお、前述の「家計調査報告」によると、コロナ禍で買われたもので前年より大きく伸びているものに「カクテル・チューハイ」がある。これも家飲みやオンライン飲み会の影響だろう。コロナ以前より酒代が増えていないか、アルコール類も食費とは別に費目立てをして管理しておきたい。

 コロナ禍の家計簿は、これまでの費目にこだわらず、新しい生活に沿った費目で管理する方がわかりやすい。特に「食費」「雑費」などに入れている支出でボリュームが大きいと感じるものは、専用に費目を作って管理しよう。

■ネットショッピングは管理しやすいルール作りを

 先の三井住友カードのレポートによると、クレジットカードによる決済のうち、EC(ネットショッピング)での利用が3割を占めるそうだ。リアル店舗ではなく、食材も含めた生活用品をなるべくネット購入で済ませたい人が増えたのは、まさにコロナ時代特有の消費行動といえる。

 若い世代だけでなくシニア層までEC消費が広がったことは当然と言えば当然だが、お金の管理はややこしい。一つのカードで行われた決済の中に、食費・日用品費、被服費からレジャーグッズ、美容やダイエット用品に使ったお金が混在しているからだ。しかも、夫と妻のそれぞれのカード明細に、日用品費や被服費が存在する場合もある。そうなると、毎月いくら家計費にかかっているか、一目ではわからない。

 どう仕分けし、どう管理するかは、家庭ごとにルールを決めるしかないが、一つには担当を決めるのも方法だ。妻が食材を買うことが多いなら、食費と日用品は妻のカード、巣ごもりレジャー関連やデリバリーは夫のカードなどといった具合。酒代や被服費はそれぞれ個人の小遣いの範囲と割り切って、おのおののカードで決済をする。やってみて不公平が生じたらその都度見直す。もし、一枚のカードに集約してポイントやマイルを効率よく貯めたいのなら、カードとともにクレジットチャージができる電子マネーやスマホ決済を費目ごとに使い分け、チャージ元だけ同じカードにまとめるという方法もある。どちらにしろ、「この支出は家計用か個人用か」という話し合いは必要だ。

 どんな時代でも無理なく貯蓄を増やすには、支出の透明化が必要だ。必要な支出額がわからないと貯蓄額も決められない。コロナが私たちの暮らしを激変させてからもうすぐ1年。長期戦になればなるほど時折立ち止まって現状確認し、適正な貯蓄計画を進めていこう。(松崎のり子:消費経済ジャーナリスト)