写真はイメージ(GettyImages)
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■コロナ禍のストレスで日本の「体感治安」が悪化する

 例年、日ごとに寒さが厳しくなる季節の変わり目はクレーム増加の傾向があり、要注意です。ただでさえ、年末年始の忙しい時期は嫌な事件、大きな事故や自殺も頻発しますが、コロナ禍ではそれにさらに拍車がかかるので注意しましょう。企業の倒産や解雇・リストラが本格化するのはこれからだといわれているからです。職を失いローンが払えず自己破産する人や、住む場所さえ失う人が増加するなどの厳しい現実は、急に寒さが厳しくなり、大雪も降った今冬の季節に重なります。

 意外かもしれませんが、コロナ禍でソーシャルディスタンスが浸透し、人との接触をできるだけ避ける生活が良いほうに影響し、現場で直接的にクレームを受ける機会は減っています。

 しかし、我慢をしながらの日常は、ストレスや不満を蓄積させます。不安のガスをパンパンにためた風船のような状況で生活しているからか、些細なことでキレる人が増え、爆発する力も破壊力を増しています。年々、刑法犯の認知(犯罪)件数は減少していますが、電車で、咳やくしゃみをしただけで睨まれてしまうなど、いつ何時、自分がトラブルに巻き込まれるかもしれないという圧迫感や恐怖で「体感治安」は悪くなっているといっていいでしょう。

■「体感治安」の悪化はごく普通の人を殺意をもった“輩”にする

 数年前に東京へ出張した際、ある駅でこんなことがありました。 

 東京は成熟した大都会です。そして、行きかう人々は総じて、行儀のよい人ばかりです。混みあう駅のホームもいつもは整然としています。しかし、行儀よく便利な生活に慣れきっている分、アクシデントにはもろくて人が怖いと感じるのは、私が田舎者だからでしょうか。

 午前11時過ぎの某駅は、いつもならラッシュアワーは終わっている時間帯なのに、この日は違っていました。季節の変わり目の影響か、人身事故が発生して山の手線と京浜東北線が止まり大変な人ごみ状態でした。そして、何よりも違和感を受けたのは「約束の時間に間に合わなくなる」といった切迫感からか、普段は真面目そうな人たちが、事故のアナウンスが流れたあと劇的に変化したことでした。

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