そのほかの反対の理由は、社会保障制度(セーフティネット)の未整備、再就職時年齢の壁が厚い、法律上、再雇用の保障がない等々。

 年齢制限についていえば、例えば、IT関連企業の社員募集の条件は35歳以下、また食材市場の管理規定では、野菜を売る女性従業員の年齢は45歳以下でなければならないという。こうした年齢制限は各地である。

 こうした事情もあり、今回の政府の決定について、SNSでは多くの人が不満を口にしている。

「政府は退職年齢を延ばすことで、年金を支給する年数を少なくさせるのと同時に、年金保険を払う年数を延ばす、一石二鳥だ。日本は働き手が足りないからそうしているが、わが国は単にお金がないからだ。本質はそこだろう」

「雇用の保障がされていないのに、年金を受け取る年齢だけ上げるなんて。これからの生活がとても不安だ」

「親に子どもを預けることができなくなったら、ますます出生率が下がる。まさに悪循環だ。今の20代、30代の老後は苦しくなるのが目に見えてくる」

 中国は「一人っ子政策」に終止符を打ってからも、3年連続で新生児の数は減り続けている。そして、進むインフレ、少子高齢化の加速、社会保障の未整備など、問題が山積している。

 いまや中国は、日本と同様、政府も企業も国民も「のんびり」する場合ではなくなっている。(文/日中福祉プランニング代表・王 青)