●強まる逆風 積もるヘイトをどう散らすか

 今年の6月、NHKのテレビ受信料を巡った裁判にて、リマーカブルな判決があった。ご存じの方もいるかもしれない。NHKが映らないテレビ(厳密には、NHK放送信号の受信を阻害するフィルターが付けられたテレビ)を使用していた女性が受信料を払う・払わないでNHKと争っていたが、東京地裁は「受信料支払い義務なし」の判決を下したのである。

 これまで行われた同様の争点の裁判では、NHK有利の判決となってきていたらしいので、これはNHKにとってはかなりショッキングだったと察する。大企業ソニーが2年前から「NHKが映らないテレビ」を発売していることもあるし、NHKへの逆風、包囲網はいよいよ強まってきている。

 NHKが取るべき生き残り策には民営化、受信料を税金として徴収する、スクランブル放送導入によるヘイト散らし、公共放送特化で受信料低減などがオプションとしてある。どれも良さそうであり、それぞれデメリットが指摘されている。とはいえ、どれを選択しても少なくとも現状よりは相当改善しそうだが、既得権益の権化たるNHKだから、外野があれこれ言おうとそう簡単には動かせない。

 筆者が考えるNHKのもっとも大きな問題は、「国民に『受信料を払うのが嫌だ』と思わせがちである」という点に尽きる。

NHKの既得権益どうこうという話を聞くと、やはり納得させられ、おおいに義憤に駆られもするが、多くの市井の人と同じように、それで自ら何か行動に移そうというところまではいかない。もっと直情的に腹立たしい感情があって、それは「なんで払いたくもないお金を払わなくちゃいけないのか」ということである。これがあるから、さらに重ねて既得権益の話を聞くと「やっぱりとんでもない。ぶっ壊してほしい!」と思いもする。

 この多くの国民から向けられているヘイトを、NHKはどのような方策をもって改善していくべきか、まず考えるべきはここである。愛されるNHK、とまではいわなくとも、蛇蝎(だかつ)のごとく忌み嫌われないNHKになるために、アプローチはいくつか考えられる。

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受信料の割高感をどうするか