●「ストアツアー」の目的は都市伝説を否定するためだった

 これは、日本マクドナルド創業者の藤田田さんが著書で説明している実話ですが、日本上陸直後から大ブームになったマクドナルドをやっかんだ何者かが、「マクドナルドのハンバーガーの原料は牛肉じゃない」という噂を流したのです。噂はやがて都市伝説となって、「知り合いのいとこがお店で働いていて、お店のバックヤードで牛肉じゃない原料を見た」といった噂が、小学生の間に広まったのです。

 それで始まったのが、小学生を対象にしたストアツアーです。お店に実際に小学生に入ってもらい、都市伝説で噂されるバックヤードも見てもらって、自分たちでもハンバーガーをつくる体験をしてみる。このようなプログラムが、日本中のお店で定期的に行われるようにしたのです。

 お店の中に入ってみれば、怪しげな加工場などなく、清潔な冷凍庫の中に保管されたハンバーガー・パティを、手慣れたクルーたちがハンバーガーに加工していることがわかります。それで、ストアツアーから戻った児童がいる小学校のクラスでは、都市伝説について「知り合いのいとこに聞いた派」と「実際にお店を見た派」で議論が起き、実際にお店を見た派の方が圧倒的に優勢となるわけです。

 結局、どこの同業他社の企みだったのかは今ではわかりませんが、こうして「アメリカから上陸した怪しいハンバーガー」という都市伝説的なレッテルは、日本マクドナルドの危機管理策によってきれいに剥ぎ取られたのです。

 では、冒頭で紹介したアメリカのマクドナルドのウェブサイトの対応は、どうでしょうか。ひとことで言えば、SNS時代の都市伝説対策として、うまく対応できているということです。

 そもそも、今回TikTokで拡散した女性の動画は、それ自体が面白かった。偶然保管してあったポテトとバーガーが、まったく腐っていない状態で24年後に発見されたのですから、確かに興味深い話です。だから、あっという間に広まってしまいました。

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SNS時代のよく考えられたコミュニケーション