●「コロナ倒産」が急増の懸念今やるべきことはなにか

 もっとも、新型コロナ感染症への過剰ともいえる恐怖心に駆られた一般市民からすれば、「旅行者=感染を運んでくる人」となって、感染を拡大させることにつながる本事業は「やめてくれ」という考えになっても仕方がないところだ。このため、本事業を巡る議論がそれに引っ張られてしまうのも同様に仕方がないことであろう。

 しかし、政治家や言論人のレべルとなれば、「ものの本質を見据えた議論」を行ってしかるべきであり、「Go Toキャンペーンではなく、失われた粗利の100%補償の実現を」と問題点を指摘して訴えるべきだ。本事業の賛成派にしても、(実際にはそうはならないのだが)これが少しは事業者支援につながることを具体的に説明するなどして議論すべきであろう。

 いわゆる新型コロナウイルス関連倒産は、帝国データバンクの調査によると、7月16日16時現在で346件、法的整理は271件、事業停止は75件となっており、倒産業種のうち観光関連では「ホテル・旅館」が46件となっている。

 一部の有識者からは「今後、この新型コロナウイルス関連倒産は急増する」との指摘もあり、予断を許さない状況であるといえる。

 そうした中、国は違うが、フランスでは観光業を具体的な支援の対象の一つとした、日本円で5兆円強の第3次補正予算案の審議が国会で行われており、早期の成立が見込まれている。

 そもそも本年度第1次補正予算で措置したということが間違いなのであるが、それはそれとして、今実施すべきでないことは明らかなのであるから、「失われた粗利の100%補償」につながる本年度第3次補正予算の早期編成こそ、与党良識派、そして野党も求めるべきなのではないか。

(室伏謙一:室伏政策研究室代表・政策コンサルタント)