●Go Toキャンペーンが事業者支援になっていない理由

 そもそも実施する条件が成立していないわけであり、その点から現段階で実施すべきではないというのが妥当な反対論のはずである(よって、旅行に行けば感染機会が増えてうんぬんというのは本事業というものを理解していないことになる。「反対のための反対」と言われても仕方あるまい)。

 しかし、本事業の「真の問題」は、そこではないと筆者は考える。はっきり言えば、それ以前の問題があるのである。

 それ以前の問題とは何か?結論から言えば、本事業は「真に事業者の支援にはなっていない」ということである。

 では、なぜ支援につながらないのか?

 考えてみてほしい。事業者にとって必要なのは、新型コロナ感染症の感染拡大によって休業を余儀なくされたり、来客が大幅に、否、激減したことにより、失われた売り上げのうち、「粗利に当たる部分の100%の補償」である。

 本来、これは可及的速やかに行われなければならないところだ。ところが、本事業は新型コロナ感染症の「感染が収束した」ことを条件とした「アフターコロナの景気対策」であるので、実施されるまではいつまでたっても売り上げは大幅減かゼロのままである。かつ本事業が実施されたとしてもすべての事業者が同様に同等の売り上げが得られるわけではない。当然、新型コロナ感染症の感染が拡大する以前と同様の数の来客が得られる保証もない。

 要は、この非常時における事業者支援策には適さず、そもそも「筋が悪い」ということだ。

 理由はそれだけにとどまらない。実際に旅行に出かけることになる一般市民、消費者についても、休業や失業、廃業などで収入が激減するかなくなってしまい、旅行に出かける余裕など全くないというのが実情だという人も少なくない。実際に本事業を使うことができる人は相当限られることが容易に推測され、消費喚起策にすらならないであろうということだ。

 事業者を真に支援する施策にもならず、消費喚起策にもならないのであれば、早々にやめるべきであるという話になるはずだ。しかし、現状では、本事業の賛否を巡る議論・論争は、こうした「基本的な点」に触れたものは、筆者の知る限り見たことがない。

 むろん、いつになるかわからない「収束」を前提にした支援策ではなく、失われた粗利の100%補償の早期実現を3月段階から強く求め、精力的に提言・情報発信活動を行ってきた、自民党の安藤裕衆院議員を会長とする議連「日本の未来を考える勉強会」の会員議員たちは、当然理解しているだろう。

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「コロナ倒産」が急増の懸念 今やるべきことはなにか