●退職金運用の間違い(3)
インデックス投信をいくつか組み合わせたらリスクはないですよね?

 投資初心者向けのセミナーでの質問。

 質問者は、「インデックス投信はリスクが少ない」と考えていて、日本株式や先進国株式のインデックス投信を組み合わせて、退職金のほぼ全額を投資するつもり。

→株式投信なので、リスクは大きい。まとまった金額で投資をするのは避けたい。

 セミナーでは「投資デビューをしたいなら、まとまった金額で一度に投資をしてはいけない」「投資のもうけの足を引っ張るのは手数料。手数料の安いインデックス投信を選択肢に」と話したところ、なぜかその質問者は「手数料が安い=リスクが少ない」と受け止めたようだ。

 運用の世界で「リスク」とは、値動きの大きさのこと。株式のように値動きが大きい投資対象を「リスクが大きい」、債券のように値動きの幅が小さいものを「リスクが小さい」と言う。

 同じ投資対象で同じような運用をするなら、手数料が安いものは、高いものに比べ「損をする金額が少なくなる可能性がある」。インデックス投信=リスクが低いというわけではないのである。

 セミナー終了後に質問を受けたときには、(さっきの私の話、聞いていたはずなのになぁ)と内心少しがっくりしたのだが、質問者は「こうしよう!」と決めていたのだとすると、私の話など耳に入らなかったのかもしれない。

 このセミナーは昨年秋に開催されたので、相場環境は高値圏。その時点で退職金は振り込まれたと言っていたので、この人こそ、その後どうしたのか気になる。

 一度に投資をしないで、まずは積み立てで買ってみましょうと、(わりとくどく)言ったものの、アドバイス通りにしてくれているといいのだが…。

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定年退職者は時間を味方につけられない