※写真はイメージです (Getty Images)
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 定年退職の時期は勤務先によりさまざまで、一般に公務員は年度末、民間企業は誕生日月の月末か翌月末、もしくは年度末のケースが多い。例年、年が明けると年度末退職の人の相談が増える。

 家計の見直しなど退職後の生活設計を相談したい人は、ほとんどが「退職前」にやってくる。一方、退職金運用について相談は、なぜか退職金が振り込まれてからの4~5月が多い。実際に振り込まれないと、実感がわかないからだろうか。

 コロナショックで世界的に株価が暴落する日が続くと、以前に退職金運用の相談、質問をした人の顔が浮かぶ。アドバイス通りにしてくれたかどうか、とても心配だ。

●退職金運用の間違い(1)
「オリンピックが終わったら直後に売る」と言った人

 5~6年前、銀行の窓口で東京オリンピック招致決定により値上がりしそうな銘柄を選んだテーマ型ファンドを勧められたから、買うつもりと相談に訪れた人。

「深田さんにはセカンドオピニオンがほしい」と言うが、「購入」の背中を押してもらい様子。オリンピックが終わった直後に売り抜けばもうけられると、自分なりのシナリオを描いていた。

→全力で「買ってはいけない」とアドバイス

 買ってはいけない理由は3つ。

 1つ目に、その投資信託は手数料が高いものだった。投資のもうけの足を引っ張るのは手数料だ。2つ目に、テーマ型ファンドはそのテーマが旬ではなくなったとき、売る人が多くなり、値下がりする傾向にある。オリンピックが始まる前にピークを迎える可能性もあるのだ。3つ目は、値動きのある投資商品の売却時期を自分で決めてはいけないから。

 その人は「オリンピックが終わった直後の2020年8月に売り抜けるつもり」と言っていたが、もし買っていたら、オリンピックが始まる前に大暴落となっていただろう。

 買ってはいけない理由を丁寧に説明すると、納得した様子(に見えた)。退職を機会に投資をはじめてみたいという希望があったので、手数料の安い投資信託をいくつか候補としてあげ、少しずつ買ってみるほうがいいとアドバイスしたが、その後どうしているだろう…。

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「住宅ローンは、退職金を投資で増やしてから繰り上げ返済するつもり」