──どこで見極めればいいのでしょうか?

 年始明けの数日間だけでなく、仕事や生活に支障をきたすようなひどい憂うつさ、倦怠感、意欲や集中力の低下などのメンタル症状が約2週間以上続くようなら、メンタルクリニックなどを受診することをお勧めします。

 本人は気が付かなくても、周囲から見ると明らかにおかしいと感じることもあります。その場合、よくあるものとしては「遅刻や欠勤が増える」「これまででは考えられないようなちょいミスが増える」「仕事の作業能率が落ちる」「しょっちゅうイライラしている」などが挙げられます。

 うつ状態になると、睡眠の質が下がります。眠りが浅い、なかなか眠れない、何度も目が覚める、明け方になると(まだ寝ていてもいい時間なのに)目が覚める……。人によっては、いくら寝ても眠たいことも。そうすると朝、出社に間に合う時間に起きられず、遅刻が増えてしまうのです。

 集中力や思考力、判断力の低下も顕著です。だから、ちょいミスが増えたり、作業能率が落ちたりするのです。感情の起伏が激しくなる人もいます。これまであまり声を荒らげたことがないのに、すぐかっとなって怒鳴り出すなどが典型的です。

●日本人は年末年始が忙しすぎる 睡眠不足や疲労をため込んでいないか

──家族や同僚、部下がそのような状態になれば要注意ですね。

 まさにその通りです。放置すれば、今は「うつ状態」といわれる段階であっても、本格的な「うつ病」に移行しかねません。

 そもそも日本のビジネスパーソンは、年明けに心身の調子を崩しやすい環境にいます。単なる「長い休みが終わった。仕事が憂うつだ」という面に加え、年末年始の過ごし方が関係しているように感じます。

──「忙しすぎる」ということでしょうか?

 正月休みを取るために、年末は仕事のスケジュールが過密になりがちです。加えて、忘年会シーズンでもあります。昨今は忘年会をしたがらない人が若者に限らず増えているとのことですが、それでも普段よりは夜の付き合いが増えるでしょう。仕事は忙しく、「飲み」も忙しいとなると、12月は多くの人が睡眠不足や疲労をため込むことになります。

 それでも、もし正月休みをゆっくりと過ごすことができれば、最初は憂うつさを感じるにしても、1月の仕事始めを万全の体調で迎えることができるでしょう。ところが、なかなかそうはいきませんよね。正月は正月でやらなければならないこと、やりたいことがたくさんあります。

 長期休みを利用して郷里に帰省したり旅行に行ったりして、戻ってきたのが初出勤の前日の深夜……なんて人もいるのではないでしょうか? 旅行や帰省は楽しいですが、日常生活のリズムが崩れやすく、普段とは違う人・事に出会うため気力体力を消耗します。結果、正月休みも心身をフル稼働させることになり、疲労がより蓄積されてうつ状態を招くのです。

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睡眠不足、疲労から「うつ」へ移行することも