「映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のようだったと言ったら言い過ぎかもしれませんが、普段から会社への泊まり込みは当たり前だったし、連日の徹夜でハイテンションになった社員たちが廊下をスケートボードで走り、水鉄砲の打ち合いをしていましたからね。もちろん、若手いじりや強制は日常茶飯事。そんな人たちの忘年会ですから……。

 クラブを貸し切って、水商売の女性を呼んで、女体盛りをして。もちろん女性社員もいましたがお構いなしでした。社内不倫は当たり前で、忘年会では『来年は相手を取り替えてみようか』って会話が繰り広げられているっていう、今では言えないぐらいの痴態が繰り広げられていました」

 日頃のストレスが爆発した……とはいえ、あまりの惨状である。Aさんは、「さすがに、自分がいた部署だけが飛び抜けておかしかったと思う」と言う。ちなみに彼はその後、体を壊して入院生活を送ったことをきっかけに、異業種へ転職を果たした。

「当時を振り返ると、あの時代は一体何だったのだろうと。夢だったかのように思います。とはいえ20年前にはすでにバブルが弾けていて、先輩からは『昔はこんなもんじゃなかった』とも言われてました。バブル時代の忘年会はどんなものだったのでしょうね……」

●若手への飲酒強制は当たり前 バブル時代の乱痴気騒ぎ
 
 ということで、バブル時代を知る50代の男性Bさんにも話を聞いてみた。彼はマスコミ業界だが、周囲には軟派な人が少なく、当時女性社員が極端に少なかったこともあってAさんが語るような「痴態」はほとんど記憶にないと言う。一方で、彼が語るのは若手への飲ませ方だ。

「今は、飲めない人に無理に飲ませてはいけないという不文律があるけれど、当時は誰もそんなこと気にしなかった。若手が飲んでその場を盛り上げなければいけない時代だったので、自分も忘年会のたびに記憶がなくなることを覚悟していました。

 もちろん具合が悪くなってトイレにこもる人もいたし、救急車を呼んだこともあった。泥酔した若手が帰宅途中に服を脱いで眠り込んでしまって警察沙汰になったこともありました。彼はタクシーで帰ったんですが自宅とはまったく違うところで発見されて、記憶がないと。さすがにその翌年からは気をつけるようにとお触れが出ましたけど、それでも『泥酔した若手がいたら、先輩社員が家まで責任を持って送り届ける』というもの。飲ませるなという通達ではなかったですから(笑)」

 当時は「オレの酒が飲めないのか!」などという言葉が平気で飛び交っていた時代(もちろん、現代でもまだあるのかもしれないが)。飲めないのは飲めない人が悪いという時代の中で、下戸の人たちはどれだけツラい思いをしたのだろう……と、アルコール全般に弱い筆者などは聞くだけで涙してしまう。非喫煙者に対する配慮も同じだろう。

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過剰いじりに婚約者激怒