●「マカ」「セサミン」の効果は限定的

「マカ」「セサミン」などは、少し低下した段階では多少の増加補充はできても、体調不良といった症状が出ているほど著しく悪化した状態を改善するまでの補充をすることはできないのです。サプリメントで大幅に低下したテストステロン値が急上昇したり、いったん壊れた体の中のたんぱく質の立体構造が元の状態に戻ったりすることは、男性医学ひと筋に生きてきた私のキャリアを賭して申し上げますが、まず不可能です。

 あるとき、高齢者向けに「このサプリメントを飲んで元気になった」と大々的に宣伝している会社がありました。広告には、私の大切な友人である登山家のM氏が登場していました。80歳を超えてエベレストに登った人物といえば、もうおわかりでしょう。

 そして、その会社はM氏の男性ホルモン値の上昇を示すグラフを広告に載せて、さもサプリメントのおかげで増加したようにうたっていたのです。しかし、M氏はかなり前から私の診察を受けて、男性ホルモンを補充する注射を打っていました。通常注射で男性ホルモンを補充した方々は、なかなかそれを公言したがらないのですが、M氏はあえてメディアや自著で「男性ホルモンは大事だ」と私の名前も合わせて言ってくれました。とても感謝しています。

 さて、問題は、その会社です。広告の男性ホルモンの増加による効果を示すグラフは私が作ったもので、それはホルモン補充で数値が上がった状態を示しています。サプリメントのおかげではありません。私は不服に思い、その会社に「大勢の人に誤解させてしまう」と連絡しました。すると、その会社の責任者があわてて飛んできて「大変申し訳ありませんでした」と平謝りし、すぐに広告の内容を取り消しました。宣伝を見ていた大勢の人の誤解が解けるように、と祈るばかりです。

●プラセボ効果でよくなる場合も!

 もっとも、サプリメントにせよ食べ物にせよプラセボ効果、つまり「これを飲んだから(食べたから)、きっと元気になるはずだ」という思い込みにより、症状が軽い場合には改善もあるでしょう。人間の体は、気持ちによってけっこう左右されてしまうからです。

 しかし、男性ホルモンがかなり減ってしまったのであれば、サプリメントではなく、ホルモン量を補充して、きちんと男性ホルモンレベルを補正しなければなりません。男性ホルモンを補充するのは注射やクリーム、肌に貼るパッチなどがあります。そういうことに対して、何となく抵抗感を覚える人も少なくないでしょう。「とりあえずサプリメントを飲んで様子を見てみよう」と思う気持ちも、よくわかりますが、実際の臨床では、ほとんど効果は認められていません。サプリメントは値段や期待に見合う効果があるとは限らないのです。

A:サプリメントでは若干の補充はできるが、症状が改善するほどの効果はあまりない