●70歳時点で資産を残しつつ毎年どれくらい遊興費に使えるか

 Sさんには、70歳時点で4000万~5000万円は保有しておきたいというご希望があります。簡単に試算を行った結果、記載されているまとまった資金やライフイベント、並びに70歳までのキャッシュフローを勘案しても、70歳時点で6940万円が残ることになります。したがって、70歳時点で4000万円を残すのであれば2940万円、5000万円残すのであれば1940万円を遊興費として使うことができる試算になります。

 このお金を58歳から70歳までの12年間で均等に使うとすれば、年間約167万~約245万円を使うことができる試算になります。75歳ぐらいまで年間どのくらい遊興費に回せますかというご質問もいただいていますが、仮に70歳以降も同じくらいの金額を遊興費として使用した場合も、75歳時点で最低でも1700万円は手元に残っている試算になります。3年後、Sさんが早期リタイアされても問題なく楽しみにお金を使うことができるでしょう。

 描いている生活をしても経済的には心配はないことから、今、一番重視すべきなのはSさんの健康状況です。「過労で肉体的・精神的に参ってしまい」とおっしゃっていますから、これからの人生は頑張りすぎないことが大切です。「何とかあと3年頑張る」とのことですが、3年間我慢した結果、健康を害してしまっては楽しいリタイア生活が絵に描いたになってしまいます。経済的には無理をしてまで働く必要はないと思われるので、ご自分の体と相談して、3年後と決めずに退職時期はもっと早期を考えられてもよい気がしてなりません。

 最後にSさんの70歳以降の過ごし方の記載がありませんが、75歳までの遊興費とかかれているのは奥さまが70歳(パートで働き続けるまで)を意識されたのだと推測します。奥さまが65歳以降にパートを辞めると収入はSさんと奥さまの年金をあわせた204万円のみに減少することになりますが、金融資産が数千万円あるため経済的な不安はないと思われます。

 1つ気になるのが、奥さまが70歳の時点でSさんは76歳になり、出歩くことも年々少なくなり、また出掛ける距離も60歳代と同じとはいかないはずです。Sさんのお住まいがどのような状況かはわかりませんが、多額の金融資産が残ってしまうと息子さんに相続税がかかる可能性もありえます。

 50歳代のSさんに相続の話をするのは早すぎるかもしれませんが、ご相談からはSさんが計画的に行動するものと思われます。蛇足ですが、頭の片隅に相続のことも入れておいてください。ただ、今は来るべき早期リタイア後の生活に期待を募らせる楽しい時間としてください。

(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)