※写真はイメージです (GettyImages)
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 世界最高レベルのホスピタリティと奇跡とも呼ばれるサービスは、一朝一夕にできたわけではない。リッツ・カールトンはどのように伝説のサービスを生み出す組織になったのか? ゼロから現在のリッツ・カールトンを育て上げた伝説の創業者が語る成功法則。同社の共同創業者、ホルスト・シュルツの著書『伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法』(ホルスト・シュルツ著/御立英史訳)の記事からその驚くべきストーリーやノウハウを紹介していきます。

●リッツ・カールトン全社員が2時間学ぶ基礎の基礎

 いまから紹介するのは、リッツ・カールトンが推奨する苦情対応の基礎の基礎である。

 ホテルビジネスを進めるうえで重要なことなので、2時間の講座を設けて全従業員に受講を義務づけている。修了証書も発行していると言えば、念の入れようがおわかりいただけるだろう。その講座で教えている内容の一部である。

1 軽く扱わない
 お客様からの苦情がどんなにバカげていると思えても、笑ったり、陰でからかったりしてはいけない。そんな気持ちを一瞬でも表情に出してはならない。あなたの目の前にいる人にとって、それはきわめて深刻な訴えなのである。

2 自分のこととして引き受ける
 苦情を言われたら、自分の問題として受け止めなさい。即座に、「申し訳ありません(アイム・ソー・ソーリー)」と言いなさい。その問題を引き起こしたのがあなた個人であろうとなかろうと、そんなことは一切関係ない。その瞬間、あなたは会社を代表しており、あなたの発言は会社の見解であるとわきまえなさい。

3「私が」と言う
 別の担当者や部署を持ち出して話を進めてはいけない。「私」を主語として話しなさい。「そうでしたか、担当の者に手違いがあったようです」などという言い方は、百害あって一利もない。すでにカッカしている人が、もっと不満を募らせるだけだ。生じてしまった失敗や誤解を、自分に責任があるという態度で引き受けなさい。

4 ゆるしを求める
 ためらわず「どうかおゆるしください(プリーズ・フォアギブ・ミー)」と言いなさい。「私たちを(アス)」ではなく「私を(ミー)」と言うことが大切だ。罪を自ら背負うということだ。これは高ぶった相手の感情を鎮めるうえで大きな効果がある。そう言われた苦情客が、「いいや、ゆるさない」と答えるだろうか。殴りかかる客がいるだろうか。まずそんな人はいない。

5 こちらの都合を押しつけない
 たとえば、会社のマニュアルを持ち出してきて、「弊社のガイドラインでは、それについては……」などと説明してはならない。ポリシー14-8-3に何と書かれていようと、腹を立てている人にとっては知ったことではない。

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