佐宗:僕自身も、ある大学でリベラルアーツとデザインとソーシャルイノベーションをテーマにした講義をしたことがあるのですが、僕の考えも岡田さんに近いですね。まず言えるのは、歴史はアナロジーをするための素材としては有効だけれど、歴史のとおりになるわけではない、ということ。また歴史が無限にあることを思うと、そのあと、どの部分を繰り返すのか、という論点もあります。そう考えると、歴史はこれから何が起きるかを「見立てる」ための素材だというのが、僕の認識です。

 もう1つ。リベラルアーツをやると学んだ気になる、というのはよくあるパターンであり、リスクでもあるので、それを避けることが大事だと思います。

『VISION DRIVEN』の終章で「真・善・美」について少しだけ触れましたが、やはり最後に残るのは人間性です。「美学」とか「倫理」とか「哲学」とか、人間にとっての変わらない「本質」はやはりどこかにあるはずで、それをいかに活かすかが、今後、リベラルアーツを使っていくときには大事になると思います。

■本は「出会う」、本は「見る」

質問者:お二人は、本をどうやって選んで、いつ読んでいるんでしょうか?

岡田:僕は、何時間もじっとして読むのではなく、移動中や寝る前に読んでいることが多いですね。月に6冊程度、知り合いや出版社から新刊が送られてくるので、それにざっと目を通すし、Amazonで月に5冊前後は買いますね。いずれも面白そうなら読む、という感じです。

 本は出会いです。いい本は社員にも薦めます。『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)は社員全員に配りましたが、全部読んでいる奴は1人もいない(笑)。読みたいと思える本に出会うかどうかであって、強制しても仕方ない。

 読んだ本を振り返ると、ここ数年はほとんどが経営関係ですね。自分の会社をどうしたらいいかと悩んでいるから、それを選び、読むのです。僕は読書家ではないですが、面白いと思う本に出合うのは上手いと思う。

 教育者で哲学者の森信三さんの言葉に、「人間は出逢うべき人には必ず逢える。一瞬遅からず一瞬早からず」という言葉がありますが、僕は「必要な本には必ず出合う。一瞬遅からず一瞬早からず」と思っています。

 僕は「この人に会いたいな」と思っていると必ず会う機会が得られるほうですが、それでもなかなか会いたいのに会えない人もいる。そういうときは、「今は会う必要がない人なのだな。必要なときにきっと会えるだろう」と考え、無理に会おうとはしません。本も同じで、僕にとっては「出会い」です。

佐宗:僕も同じ感覚です。本を読むときは、著者がどんな人で、いつ生きていて、その著作が何冊目で、どんなことを書いているかを確認してから読みます。

 本は人生において必然性があるから書いています。言いたいことがある。だから、著者がどんな必要からその本を書いたのかを考えながら読むと、著者が最も言いたいことが鮮明になります。

 全部読む必要はないと思います。僕は本を多く読む方だと思いますが、「読む」というよりは、「見る」。目次と図表を見て、「この人に会えたらどんな話をしたいか」をイメージできると、自然と中身が分かります。

 いい質問をするために本を読むという感覚があり、この著者と会いたいか、何の話をしたいか、一緒にどんなことができるか。それを探すというか、感じるのが、本とのつき合い方なのかな、と思います。

藤田:大変、興味深いお話でした。岡田さん、佐宗さん、ありがとうございました。