※写真はイメージです(GettyImages)
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●90歳でも20歳若返る!

 私は1930年(昭和5年)生まれ。数え年で90歳になるベンチプレスの現役選手です。これまで世界大会(70歳以上の部・47kg級)で、4つの金メダルを獲得してきました。最近テレビに出演することも多くなった私ですが、日々実践している「医師も認める健康法」を、あるがままにお伝えしていきます。

 若い頃は、あれやこれやと凝った料理をせっせとつくっていたのに、歳をとると料理をつくるのがだんだん億劫になって外食で済ませたり、お惣菜やお弁当を買って食べたりするお友だちが増えてきました。

 私は外食を一切しません。お総菜もお弁当も買った試しがない。自分の手足が動くうちは、これからも“完全自炊”を続けるつもりです。

 実を言うと、自宅のお隣は和食店なの。でも、一度も暖簾をくぐったことがありません。ごめんなさいね。

 それほどまでに、私が自炊にこだわる理由は3つあります。

 1つは、かつてこんな経験をしたことがあるからです。私は、1回のご飯の量は、おにぎり1個分より少ない70g前後と決めています。長年の経験から、それが私にとってちょうどいいとわかっているの。

 あるとき、たまには外食してみようと、お店に入りました。定食のご飯の量が多そうだったから、私は注文する際に次のように頼みました。

「ご飯の量を半分にしてください」

 すると、接客してくれた若い店員さんから、思いがけない言葉が返ってきました。

「お客さま、ご飯を半分にしても、値段は同じですよ」

 その答えを聞いて、私はびっくりしました。そして、悲しくなりました。

 私はご飯を減らしてもらった分だけ、値段をまけてもらおうなんて、これっぽっちも考えていませんよ。お金が惜しくて「ご飯の量を半分にしてください」と頼んだのではありません。

 私が食べ切れないと、結局はご飯を残すことになります。残したご飯は捨てられてしまいます。私は、農家が丹誠込めてつくったお米が無駄になるのが嫌だから、ご飯を減らしてくださいと頼んだのです。

 本来なら食べられる食品が捨てられることを、最近では「フードロス」と呼ぶみたいですね。ご飯を半分に減らしてもらえたら、その分だけ他の人にご飯がまわせます。そうするとフードロスが避けられて、ご飯が無駄になりません。

 古い話になりますけれど、私は戦中・戦後の食糧難の時代に娘時代を送っていました。だから、食べ物のありがたみは骨身にしみているんです。

 子どもの頃から、大人たちに「食べ物に感謝をしなさい」と耳にタコができるくらい言われて育ちました。いつでも好きなときに好きなだけ食べられる。そんな時代に生まれ育った若い人たちには、食べ物のありがたみがわからないのかもしれません。

 でも、時代はつねに変わるもの。飽食の時代がこの先もずっと続くとは、誰も断言できません。いつまた、食糧難の時代に逆戻りしないと言い切れるでしょうか。

 私は毎朝、新聞を隅から隅まで読んでいますが、日本の食料自給率が低いという記事をよく見かけます。ちょっと調べたら、日本の食料自給率は40%を切っているそうです。60%以上は海外から食べ物を輸入しているのですね。

 外国から食料が入ってこなくなったら、食べるものに困る人が出てくる可能性だってあります。この瞬間も、ご飯が食べられない人は大勢います。日本では飽食の時代とか言っていますけど、世界の9人に1人は栄養不足で飢餓の危機に瀕しているそうです。

 そう思いを巡らせたら、食べ物は一切無駄にできません。

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きれいに調理するからこそ料理に魂がこもるのです