「新婦の従兄という男性が金髪の派手な人で、お酒が入ってからいろんなところであいの手、というか野次を入れるようになった。例えばファーストバイトの時おもむろに『キース、キース!』と手をたたいたり、新郎に向かって『幸せにしろよ!』と大声で言ったり。あの人が声を張り上げるたび、会場がすごい緊張感に包まれた」(Eさん/38歳男性)

 Fさん(43歳男性)が20歳そこそこで参列した式も、関係者が不穏であった。

「高砂にずっとまとわりついている参列者の男性がいて、席次表を見ると新婦の大学の友人らしかったが、詳しくどういう人なのかはわからなかった。ずっとヘラヘラしていて、着席していなくていい時間は高砂のあたりを常にうろついている。

 そのうちに新婦が我慢の限界に達して、『いい加減にして!』みたいなことを小さく叫んでいて、たまたま自分は高砂と席が近かったのでその声が聞こえたが、その声が聞こえた範囲の人たちは一瞬凍りついた。

 その男性はそのあと係の人に会場外に連れ出されて、戻ってきたらちょっとの間おとなしくしていたけどまた高砂の方に行って、再度係の人に連れ出されてからもう戻ってこなかった。

 式が終わって日がたってから新郎に『あの人は誰だったの?』と聞くと、新婦の学生時代の元カレだったらしく、未練があったのかわからないが、その辺の事情があって嫌がらせじみたことをしていたのではないかということだった」(Fさん)

 参列者が式をぶち壊しにしてしまっても、それはその人物を招待した新郎新婦側の責任だが、参列者の品位や動向まで完璧にコントロールするのも難しかろうから同情に値するとも見ることもできるし、“類は友を呼ぶ”の考えから「日頃の行い」と片付けることもできようか。

 基本的に“一生に一度の結婚式”なので、主催者側は趣向を凝らして念には念を入れて当日に臨むが、式から不吉の可能性を完全に排除することはできない。悪い意味で珍しい結婚式になってしまったら新郎新婦には気の毒だが、こうして第三者が話のタネにでもして興味深く思うことが、残念な結婚式に対するせめてもの手向けである。(武藤弘樹:フリーライター)