日本人の「交渉の常識」が世界で通用しない理由
ライアン・ゴールドスティン弁護士×鮫島正洋弁護士 対談

ライアン・ゴールドスティンダイヤモンド・オンライン

 (11:40)ダイヤモンド・オンライン

 (11:40)ダイヤモンド・オンライン

交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則
ライアン・ゴールドスティン
978-4478066959
amazonamazon.co.jp

『交渉の武器』の著者・ライアン・ゴールドスティン氏と、『下町ロケット』(池井戸潤/著)に登場する神谷修一弁護士のモデルとなった知財のスペシャリスト・鮫島正洋弁護士氏の対談が実現した。テーマは「強い相手にも負けない交渉の原則」。経営資源や社会的知名度で劣るベンチャー・中小企業が大企業との交渉で勝つには、どのようなことを意識すればいいのか。2人の弁護士が語り合った。

●「主張する点」と「隠す点」の境目を決める

ライアン・ゴールドスティン氏(以下、ライアン) 本日はよろしくお願いします。

鮫島正洋氏(以下、鮫島) よろしくお願いします。ライアン先生のご著作である『交渉の武器』、拝読しましたよ。「世界で最も恐れられる法律事務所のトップ弁護士だから語れる、日本人のための交渉術」として、共感する部分がたくさんありました。

ライアン ありがとうございます。
 鮫島先生は、『下町ロケット』に登場する神谷弁護士のモデルとして知られていますね。主人公の佃航平が経営する小さな製作所・佃製作所が、さまざまな大企業から特許訴訟を起こされたり、圧力をかけられたりしながら、それでも自分たちの会社としての「筋」を通していくのが『下町ロケット』のストーリー。その中で神谷弁護士は、佃製作所にとっての救世主的な人物として登場します。

 鮫島先生も現実に、ベンチャー・中小企業の知財戦略に関わる弁護士として、数多くの大企業を相手に日々、訴訟や交渉の場で戦っていらっしゃいますね。先生が「強い相手と交渉する」ときに意識しているのは、どのようなことですか?

鮫島 「強い相手と交渉する」。まさにライアン先生や私にとって、日々の仕事における大きなテーマですね(笑)

 ライアン先生のおっしゃるとおり、「ベンチャー・中小企業」対「大企業」という交渉では、私は99%、ベンチャー・中小企業側に立つような役回りになっています。

 近年、日本国政府はオープン・イノベーションを進めていますが、その構図のほとんどは、ベンチャー・中小企業がアイデアや知識、ノウハウを出し、大企業がそれを採用してビジネス化するというもの。その「採用」の段階でライセンスや対価をどう設定するかという交渉がとても多いんですね。

ライアン とてもシビアな交渉ですね。

鮫島 ええ。日本では歴史上、「ベンチャー・中小企業は下請け、大企業は元請け」という関係性が根強かったですから、大企業の担当者もいまだに、「ベンチャー・中小企業の話を聞いてやる」という姿勢で交渉してくることが多いんですよ。

 極端にいえば、「アイデアや知識、ノウハウだけもらって、あとは自分たちの系列の会社でそれをやらせておけばいい」という意識の会社もある。そしてベンチャー・中小企業側も、「自分たちは所詮下請け」という負い目をどこかで抱えていますから、その圧力に屈してしまう。政府がいくらオープンイノベーションを進めようとしても、「下請け対元請け」というかねての関係性を拭い去れていないのが今の日本なんです。

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ベンチャー・中小企業が大企業に勝つ交渉をするための鍵は…

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