●入試の傾向II:問題文の文字数の増加

 次に、全教科を通じて、問題文の文字数が増えたのも大きな特徴だったと富永氏はいう。これは2020年の大学入試改革を見据えたものだ。

 例えばTVの特番で一躍注目を浴びた広尾学園では、“メルカリ”の社会的意義とは何か、受験者数を大きく伸ばした御三家・麻布では、オリンピック・パラリンピックをテーマに、予想される社会の変化をスポーツで解決するにはどうしたらよいのか、それぞれ自分の考えを書かせる問題だった。

「聞かれていることは難しくはないのですが、問題文がひたすら長く、世の中の出来事に関心がない小学生には集中力が続かず、読みづらい。机の上の勉強と日常で触れておくべき社会の出来事とが結びつけられるかが問われたと思います」

●入試の傾向III:発信力、コミュニケーション力が問われる

 3つ目は、これまで以上に“書く力”が求められたことだ。2019年度でセンター試験が廃止され、2020年度からの新テストには数学と国語で記述式の問題が導入されるのも一因とみられる。富永氏は“書く力”はコミュニケーションの“経験”が不可欠だと語る。

「特に子どもの場合、いきなり“書く”というのは難しい。まず、考えを頭の中で言葉にして、整理して意見をいうというアウトプットの訓練を経て育つものです。これには子どもとの対話、コミュニケーションが不可欠です。これまでのように、塾でパッケージ化された膨大な教材を指示通り黙々とこなすという一方通行なやり方では対応しきれません。少人数指導のVAMOSの強みは、まさにこの“対話”、“コミュニケーション”を通じてアウトプット力を高められるところにあります。生徒一人ひとりの性格に合ったクラス編成で発言しやすい環境をつくっているので、コミュニケーションはとても活発です」

 また、首都圏で易化した算数だが、関西では真逆だった。日本最難関の灘は稀に見る難しさで、合格者平均も例年にない低さだった。これについて富永氏は、学校側はあえて難しい問題を出すことで、受験生との“対話”を求めていると見る。

「学力そのものだけではなく、粘り強さや折れない心、そして発信力を求めているのだと思います。試行錯誤を重ねながら『ここまでこんなふうに考えてみたが次のステップがどうしてもわからない』といった過程を答案に残すことで、受験生が学校に伝えようとする力を測りたいのでしょう」

●子どもだからこそ、子どもらしい“体験”を

 英語の4技能化など、親世代の経験が活かせない未来への不安から中学受験熱が高まり、さらに塾に通い始める時期も低年齢化しているが、

「こうした現状への“警鐘”とも取れるメッセージが、各校の入試問題からひしひしと伝わってくる」と富永氏はいう。

「ニュースやワイドショー、ドラマや映画などを家族でのんびりと見ながら交わす日常の会話。友達との外遊び、トランプやボードゲーム、折り紙といった子どもらしい遊びをたっぷり満喫してきたかどうか。入試を通じて、そんなリアルな“体験”をなんとかして引き出そうと学校側は腐心しています。そして、早くから塾に通って順位や点数に翻弄される必要はなく、『子ども時代は子どもらしく、しっかり遊んでね』というメッセージを送っているのだと思います。

 VAMOSでも、カリキュラムの中にトランプやボードゲームを積極的に取り入れていくつもりです。子どもと楽しくコミュニケーションしながら、ワクワクして学べる環境こそが学力、思考力を伸ばす土台です。自著『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』のなかでも、お子さんのタイプに合わせた指導方法の大切さを伝えてきましたが、これからも成績という数字にとらわれず、生徒一人ひとりの人間力を育てていくことを大事にしていきたいですね」