●JR東が狙うのはリムジンバスの乗客

 国内線旅客についても同様の傾向が表れている。2013年まで約30%を保っていたモノレールのシェアが、2015年に26%、2017年に23%と直近5年間で大きく数字を落とし、入れ替わるように増加したのがリムジンバスや自家用車だ。2015年に首都高中央環状線大井JCT~大橋JCT間が開通したことで、羽田空港までの所要時間が大幅短縮した影響と考えられる。

 新宿~羽田空港間のリムジンバスは、中央環状線開通によって所要時間が最大15分短縮し、定時性も向上した。現在の所要時間は最短25分、混雑時は40~50分だ。新宿~羽田空港間を25分程度で結ぶ羽田アクセス線(西山手ルート)が開業すれば、リムジンバスの乗客を取り込むことができるだろう。その場合、山手線経由京急利用の運賃481円(値下げ後)ではなく、新宿発リムジンバスの運賃1230円の価格帯で勝負することができる。

 新宿以外の主要ターミナル駅からのアクセスも視野に入るはずだ。

 たとえば、成田空港アクセスにおいて、JR東日本の「成田エクスプレス」は主要ターミナル駅から乗り換えなく直通する利便性を売りに、京成電鉄のスカイライナー・アクセス特急に対抗している。羽田空港アクセスにおいても、宇都宮線・高崎線、常磐線、埼京線、中央線、京葉線の各方面から毎時1~2本の羽田空港行き直通特急列車を走らせれば、各方面から羽田空港に向かうリムジンバスの乗客を奪うことができる。

 そう考えると、JR東日本グループとしての東京モノレールの今後も見えてくる。現在、日中時間帯に羽田空港に乗り入れる本数は京急12本に対してモノレールは15本。この高頻度運転を全て、羽田アクセス線に転換することはできないから、設備や保有車両数をダウンサイジングしながら役割分担をして生き残ることになる。

 開業当初の東京モノレールは羽田空港までノンストップで運転していたが、現在では大井競馬場や流通センターなど中間駅の利用者が増え、天王洲アイルや天空橋周辺など沿線開発も進んでおり、4割以上が空港旅客以外の利用者だという。今後は再開発が進む臨海部の通勤路線としての性格が強まり、中間駅の利便性を重視したダイヤに変わっていくことになるだろう。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)