●運用で損が出た場合

 会社員で資産運用をしている人の中には、株式や投資信託の売買で「源泉徴収ありの特定口座」を利用している人が多いだろう。実際、その特定口座1つだけであれば、売買による損益や配当金との通算が自動的に行われるので、確定申告の必要はない。

 ところが、複数の金融機関で「源泉徴収あり特定口座」を持つ人で、いずれかに損失が発生した場合、確定申告をすれば、複数の口座内容を損益通算でき、源泉された税金が戻ってくる。損失分に関し、1年分の確定申告で相殺しきれなかった場合は、翌年以降3年間にわたって繰り越すこともできる。なお、「源泉徴収なしの特定口座」や「一般口座」の場合は、そもそも確定申告が必要だ。

 また、外貨預金や外貨建て債券などで為替差益が出た場合は、雑所得扱いになるので、確定申告が必要になる。雑所得内なら損益通算はできるが、他の所得とは損益通算も繰り越しもできない。

●給与所得控除以外に経費が認められる場合

 会社員には、元々使っても使わなくても所得から控除される経費相当分として、「給与所得控除」が認められている。でも実際には会社員でも様々な業務活動を行い、自腹を切っている人もいるし、事業主等との公平性の観点から「特定支出控除」が導入されている。

 2012年の税制改正で、控除の対象が図書費・衣服費・交通費にも広げられ話題になったが、その内容は次の表の通り。

 これらは、給与所得控除の半分を超えた分を申告できるので、実際は、図書費やスーツ代や交際費などの必要経費の積み上げで申告するケースは少ない。例えば、年収500万円の場合、給与所得控除は154万円(500万円×20%+54万円)なので、その半額の77万円以上であることが必要で、資格取得講座や仕事で活かすスキルアップの受講費用などで申告する人が多いようだ。

●還付申告のタイミングや期限は?

 以上、会社員が使える確定申告について主なものを整理したが、税金が戻ってくる還付申告は、書類さえ揃っていれば、確定申告の期間(2019年は2月18日~3月15日)にこだわらず、1月1日から申請できる。

 また、確定申告を忘れていても、申告の対象となる年から5年以内であれば遡って申告し、還付を受けることもできる。ただし住民税は戻ってこないので、できるだけ前年の収入は翌年の確定申告時期までに申告しよう。特に、確定申告の後半になると申告の相談等で窓口がかなり混み合うため、書類を提出してから還付金が振り込まれるまでに1ヵ月半ほど要することもあるので、早めに提出することをオススメする。

 会社員は、確定申告について縁遠く感じてしまう人も多いだろう。ところが実際には、自分の所得税を振り返って妥当な額に修正できる最大のチャンスでもある。ぜひ活かしてほしい。

(注)本記事は、2019年2月現在の法令を元にした一般的なものであり、詳細については税務署および税理士など専門家へご確認ください。

吹田朝子:(社)円流塾代表理事、ぜにわらい協会会長、STコンサルティング(有)代表取締役社長