●交渉は「フェイス・トゥ・フェイス」が原則

 ちなみに、コミュニケーションはフェイス・トゥ・フェイスで行うのがベストだ。

 もちろん、いつもフェイス・トゥ・フェイスで交渉をするのは困難だから、メールや電話も併用する必要があるのは当然のことだ。しかし、重要なテーマについてコミュニケーションを行うときは、できる限りフェイス・トゥ・フェイスで向き合うようにしたほうがいい。

 なぜなら、フェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションが、最も情報量が豊富だからだ。

 人間は言葉だけでコミュニケーションを行っているのではない。相手の表情、仕草、その場の空気からも膨大な情報を受け取っている。相手の本音を探るためには、言葉だけではなく、そうした非言語的なコミュニケーションを取る必要があるのだ。

 だから、フェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションを取るのが難しいときには、メールではなく電話を選択すべきだ。電話では、声の調子や息づかいから、相手の本音を察知することができるからだ。

 要注意なのがメールだ。

 メールはテキスト情報だけだから、そもそも情報量が少ないというデメリットもあるが、それ以上に問題なのは、メールを書くときには、お互いにフェイス・トゥ・フェイスでは言いにくいような「強い要求」も書きやすいことだ。その結果、双方が態度を硬化させて、交渉が膠着状況に陥ってしまう恐れがあるのだ。

 あるいは、メールは記録がいつまでも残るうえに、そのまま第三者に転送することもできる。いらぬ言質を取られて、不利な状況に追い込まれる恐れもあるのだ。だから、私は、交渉においてはメールを慎重に扱っている。こみ入った内容のときは、必ず、電話かフェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションを取り、メールを使うのは事務連絡のたぐいのときだけに限定している。

次のページ
「質問」で主導権を握る