●喜怒哀楽の正しい割合を意識して生きたい

 さらに言えば、精神面も同じくバランスが重要なことはいうまでもないことだと思います。

 喜怒哀楽といいますが、この4つの感情はどれも大事だと考えることはできないでしょうか。怒っているだけでは健康とはいえないのと同様に、ずっと喜んでばかりいるというのも不自然です。

 喜楽を中心に、スパイスのように適度に怒哀を感じる精神状態がいいと思うわけです。喜楽を合わせて全体の80%、怒哀合わせて20%ぐらいが理想だといえるのではないでしょうか。

 正常に怒りを感じる感情も人間として重要なことはいうまでもないでしょう。

 ただ、年を取ってくると、このバランスがややもすると逆転しがちになるようです。怒哀の方が多くなってしまう。

 脳科学的にいえば、加齢により怒りやすくなることは事実だそうです。

 最近、怒っているお年寄りをよく見かけるようになりました。報道では暴力事件を起こすお年寄りも増えてきたようです。

 自分のためにも、怒りの感情を抑える努力をする必要があると思います。

 皆さんの自己分析はどうでしょうか。若い時よりも、怒りの許容度が低くなっているということはないでしょうか。例えばテレビを見ていて、怒りを感じる場面が多くなってきてはいませんか?

 怒りを感じたら、「7秒間深呼吸をしろ」などという方法があります。つまり、怒りと上手くつきあうアンガーマネジメントという方法です。試しに取り入れてみるのも良いのではないでしょうか。

 バランス、中庸、適度。

 若いうちは生ぬるく見えたこれらの言葉が、加齢とともにむしろ大切になってきます。そしてそれは「成熟した大人の知恵ともいうものなのだ」と感じ始めています。

明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)