●「平等」と「公平」を区別する

「全員」と「全体」を考えることと同時に大切なのは、「平等」と「公平」を区別することです。

 地震で避難所の運営支援を始めたとき、こんなことがありました。支援物資が届いたので、すべての方に「平等」であるよう配慮しながら、支援職員が体育館の真ん中に物資を置きました。そして物資を並べ終わったところで、避難されているみなさんに自主的に取りにきていただきました。

 ところが、体が思うように動かず物資を取りに行けない高齢者や、赤ちゃんを抱っこしていて物資を取りに行けないお母さんがいることに、ある女性が気づいたのです。

 みんな「平等」になるように、よかれと思って真ん中に置いたものの、そこから先は強者優位の競争社会になってしまっていたのです。必要だったのは「弱者への配慮」であり、「平等」ではなく「公平」だったのです。職員には決して悪意があったわけではありません。もう一歩の配慮が足りなかったのです。

 何事も完璧は難しいかもしれませんが、スピーディーに全体をよくすると同時に、「公平」に配慮して「公正」の実現を意識することが大切なのです。

著者プロフィール
高島宗一郎(たかしま・そういちろう)
1974年大分県生まれ。
大学卒業後はアナウンサーとして朝の情報番組などを担当。
2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。
2014年と2018年いずれも、史上最多得票を更新し再選(2018年11月現在)。

2014年3月、国家戦略特区(スタートアップ特区)を獲得、スタートアップビザをはじめとする規制緩和や制度改革を実現するなど、数々の施策とムーブメントで日本のスタートアップシーンを強力にけん引。福岡市を開業率3年連続日本一に導く。

MICEやクルーズ船誘致、コンテンツ産業振興などの積極的な経済政策で、一期目4年間の税収伸び率は政令指定都市トップ。現在、政令指定都市で唯一、5年連続で税収過去最高を更新中。

一方、借金に依存しない自治体運営や行財政改革に取り組み、二期8年間で約2300億円の市債残高を縮減。

熊本地震の際には積極的な支援活動とSNSによる情報発信などが多方面から評価され、博多駅前道路陥没事故では1週間での復旧が国内外から注目された。

2017年日本の市長では初めて世界経済フォーラム(スイス・ダボス会議)へ招待される。

今回、『福岡市を経営する』が初の著書となる。