●小粒になったECメンバー 再出発は前途多難

 そう考えれば、かつての師を極悪人に仕立てるなど、最近の西川社長の執拗な攻撃姿勢も理解できようというものだ。

 問題は、ポスト・ゴーン体制がうまく始動できるかどうかだ。

 1999年にルノーに救済された経緯から、日産の企業統治は「経営」と「執行」が完全に分離されている。経営を担う取締役会はゴーン氏が全権を握り、その機能は形骸化していた。

 一方で、日産の最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティ(EC)は強い執行権限を有してきたといっていい。

 もっとも、ECメンバーもかつての陣容に比べれば、小粒感は否めない。志賀氏、アンディー・パーマー氏(現アストン・マーティンCEO)がいたころは、ゴーン氏に反論するメンバーもおり、日産経営層の人材枯渇が言われて久しい。だからこそ、ゴーン氏の独裁を許したともいえるわけだ。

 新執行体制では、ルノー出身者の入れ替えと、ゴーン氏と近かったムニョス氏の動向がかくらん要因となりそうだ。西川社長は人望が薄いことで知られるが、日本人幹部との関係性は悪くない。

 ある日産元幹部は、「一番のリスクは、全ての問題がゴーン氏の長期政権にあり、その悪の根源を断ち切れば日産が良くなると思い込むこと。そんなお気楽な話ではない」と警鐘を鳴らす。

 始動したばかりのポスト・ゴーン体制の船出は前途多難だ。(週刊ダイヤモンド編集部)