---食品販売会社の事例---

 中年男性が、販売会社のコールセンターにクレーム電話をかけてきた。その迫力に恐れをなしたオペレーターに代わって私(筆者)が対応したが、男性は私の説明にも、まったく耳を貸さない。

「商品の交換?クーポン券?そっちが決めるもんちゃう!どないすんねんボケ、許さんぞ。頭おかしいんか!何わけのわからんこと言うてんねん!」

 私は、これ以上の話し合いは不可能と判断し、モードチェンジした。

「こんなに怒鳴られると対応できませんので、電話を切らせていただきます」

「やかましいわ、ボケ。なめた態度しやがって、半殺しやぞ」

「半殺し、ですか。怖いですね。警察に相談に行ってきます」

 男性は「なめとんな、アホんだら」と言い放って電話を切った。

 ところが、しばらくして再び電話がかかってきた。

「オレ、口悪いけど、そんな悪い男とちゃうから。半殺しいうても、殺さんだけマシやろ」と、妙な理屈でその場を取り繕おうとした。

(了)

『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、このようなクレーム事例をふんだんに紹介しながら、対面・メール・電話あらゆる場面における正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法、高齢化に伴い増加している「シルバーモンスター」の実態と対策など、クレーマーの終わりなき要求を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。

 ぜひ、現場で使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。

(参考記事)
クレーマーの長電話を強制終了するシャットアウトフレーズ“3連コンボ”

援川聡(えんかわ・さとる)/(株)エンゴシステム代表取締役。
 1956年広島県生まれ。 79年大阪府警察官を拝命。95年に大手流通業(株)マイカルに就職。元刑事の経験を生かし、トラブルやハードクレームの対応にあたる。適切で確実な解決術は高い評価を受け、業界団体の講師を務めるなど悪質クレーム処理の専門家として認知される。2002年、「困難なクレームを解決し、企業の危機管理を援護する」をモットーに(株)エンゴシステムを設立。豊富な現場経験と独自のノウハウをもとにリアルタイムで企業、医療機関、役所等をサポート。常に数十社と顧問契約を結び、これまでアドバイスした件数は5000を超える。講演・セミナー講師を年間100回以上務めるほか、新聞・雑誌への寄稿、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」、フジテレビ系「プライムニュースイブニング」などテレビ出演も多数。

 著書に『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』、『クレーム処理のプロが教える 断る技術』(幻冬舎)、『超プロがついに明かす クレーマーの急所はここだ! どんな問題もすべて解決! 』(大和出版)などがある。