●「鬼軍曹」体制に変わったら3人はどうなったのか?

 そしてBチーム長の後任は他のチームを仕切り、社員から「鬼軍曹」と恐れられていたベテランのチーム長が選ばれた。

 労務管理については、これまで総務にまかせっぱなしだった。しかし今回の事態を踏まえ、現場の把握が必要だと考えたA工場長は、全セクションのチーム長と直接面談を行った。その結果、残業や休日労働の時間は労働基準監督署の指導もあり、月30時間以内に抑えられていた。とはいえ急な残業や休日出勤を避けるために、業務シフトの調整方法を改善したり、社員のメンタルヘルス対策を実施したりするなど、会社として取り組んでいかなければならない喫緊の課題が見えてきた。

 特に若手社員が増加傾向にある社内事情を考えると、若手対象の技能研修や職務の指導、メンタルヘルス対策の研修はすぐにでも実施していく必要があると判断し、手初めに指導力アップを目的としたチーム長対象の管理職研修を行った。

 丙チームが「鬼軍曹」体制に変わると、部下を徹底的に鍛え直し、体制を立て直すことに成功したのである。

 C、D、Eはその厳しさについていけず「会社を辞めたい」とボヤいているが、かといって転職活動をする気力もなく、悶々とするばかりであった。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。

(木村政美:社会保険労務士)