河端 英語教師として言わせてもらえば、英語はまず「書く」「読む」が大切なんです。大学入試改革では「聞く」「話す」にも比重が置かれた試験が行われようとしていますが、東京大学はそのことについて疑問視しています。聞く・話すなんて、5歳の子どもでもできますからね。

佐藤 そうなんですよ!

河端 日本で一番日本語の上手な外国人は相撲取りです。彼らは全く日本語を知らないで来日しても、すぐに流暢にしゃべれるようになります。日本人だって必要に迫られれば、「聞く」「話す」はいつでもできるようになるということです。

佐藤 私はずっと奈良に住んでいますが、いつの間にか、駅員さんやバスの運転手さんなど皆さんが外国人観光客に英語で対応するようになっていました。最近、外国からの観光客が多くなったので、必要に迫られたのだと思います。

河端 ある企業の社長が言っていましたが、そこに勤める人は全員中国語ができるそうです。中国人観光客に対応しようとするうちに、しゃべれるようになっちゃったとか。「話す」「聞く」語学は、学校で習わなくてもいいってことですよね。ただ、やはり文法ができないと、5歳レベルの会話はできても、論理的な会話はできない。これでは学問やビジネスの場では通用しません。

佐藤 ダメですね。

河端 だから大切なのは「書く」「読む」です。論理的な会話ができるかどうかは、「書く」「読む」がベースになるからです。そして「書く」「読む」は簡単には身につきません。海外の大学に留学したときに、「論文読めません」「エッセイ書けません」では話にならないわけです。

佐藤 将来のことを考えても、まず「書く」「読む」を学ぶことが大切というわけですね。

●子どもの学力は大きく下がっている 学力低下を食い止めるには

佐藤 先生は40年以上教育に携わっていらして、昔の子どもたちと最近の子どもたちを比べて、大きく変わったとお感じになることは?

河端 平均的な学力が10年前、20年前と比べても大きく低下していますね。

佐藤 やはり低下しているんですか!

河端 ええ。偏差値では出てきませんが、点数で比べてみると、上位も下位も一様に学力が低下している状況がわかります。

佐藤 それはスマホとかゲームのせいでしょうか?

河端 それもあると思いますが、より大きいのは、社会や学校が子どもたちに「勉強しろ」と言わなくなったことです。一部の進学校に通う子を除いて、多くの子どもたちは「勉強しろ」と言われる機会がありません。「勉強してどうなるの?」という夢のない社会になっているからなのかもしれません。今、子どもたちのなりたい職業の上位は、芸能人やスポーツ選手に……。

佐藤 ユーチューバーとか。

河端 そうです。勉強しろと言われないし、勉強してもどうなるかわからないから、将来の夢といったら芸能界かスポーツ選手か、ユーチューバーになってしまう。しかしそれは現実的ではありません。勉強した子どもたちが社会に出るときにはさまざまな道が開けていますが、そうではない子どもたちには選択肢があまりないというのが現実です。

佐藤 その子たちが大人になって、自分の子どもを育てるときにはもっと学力レベルが低くなりますよね。

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残り少ない夏休み、親子でどう過ごすか?