佐藤 傷つけないようやるという配慮は必要ですね。うちでは、末の娘がスマホ世代で、四六時中LINEをしていたことがあります。しかし、「あなたの輝くような18年間を、その機械とアプリで潰すの?」と言ったらわかってくれました。そして、「家に帰ったら電源を切ること」「寝る直前に5分だけチェックする」などの決まりを決めました。

河端 ルールを決めることは大事ですね。私の塾では、自然豊かな環境のなかにある合宿所で合宿をやることがありますが、スマホやゲームは当然持ち込み禁止です。合宿は、スマホもゲームもない生活を味わってもらうことが目的でもあります。

佐藤「スマホなしでも生きていける」という体験をさせるんですね。

河端 そうです。合宿に行ってスマホもゲームもないと、手持ち無沙汰になり、子どもの心に空白ができます。心に空白ができると、素直にいろいろなことを受け入れてくれるようになります。勉強に身が入るだけでなく、自然の美しさを見て感動を味わってくれたりします。

●子どもに計画性はない スケジュールは親が立ててあげる

佐藤 合宿ならカリキュラムが決まっていますが、家ではどうでしょうか。スマホを取り上げて、「時間が空いたから何をしようかな」では意味がありません。そこで親の出番です。勉強のスケジュールを立ててあげるんです。いつまでに何をやるのか、具体的に決めてあげることが大切です。「算数のこの単元について勉強する」ではなく、「算数のこの単元を1時間で3ページ」というふうに、具体的に数字に落とし込むのがコツです。数字でやれば達成感が確実に得られます。

河端 子ども自身ではスケジュールを立てることはできませんからね。

佐藤 ええ、特に小学生にとっては難しい。でも小6までお母さんが計画を立ててあげたら、そのやり方を見て、中学生頃からは自分でできるようになります。

河端 親が見本を示すことが大事ということですね。私は、長期的なスケジュールも必要だと思いますが、短期的なスケジュールを重視した方がいいと考えています。私の本、『頭のいい子は「習慣」で育つ』にも書きましたが、田植えをするときには、足元だけを見て黙々とやった方がいい。

佐藤 なぜでしょうか。

河端 田んぼ全体を見るとやる気がなくなるから(笑)。それと同様に、勉強も長期的な計画だけではやる気が続きませんが、短期目標であれば、着実にこなしていけます。着実にこなすことで達成感を得られます。達成できたら「ほら、できたじゃないか」「君はできるんだ」と褒めてあげて、自信をつけさせる。そうすると子どもは勉強がだんだん楽しくなって、やがて自ら進んで勉強をするようになります。

佐藤 それ、大賛成です!短期目標を設定したら、小テストからやってみるといいと思います。10点満点の漢字テストとか、ああいうものなら親もチェックしやすいし、勉強すればきちんと点数が取れるようになるから、成功体験も得やすい。点数が取れるようになると、子どもはやる気になってくれるんですよね。

河端 英語で点数を取るなら、単語を覚えることです。長文読解の問題を解くにしても、文章のなかで4、5個わからない単語があったら、全体として意味がわからなくなってしまいます。逆にそこに書いてある単語の意味が全部わかれば、文法を知らなくてもおおよその内容は理解できます。したがってまず単語を覚えることが大事。ところがそういうことは学校でも塾でもなかなか教えてくれません。単語の勉強は面白くないですからね。

佐藤 英単語だけでなく古文単語も同じです。単語を覚えると、確かに劇的に点数は上がります。でもやはり辛いので、単語の暗記から逃げてしまう子も多いと思います。

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単語を覚えるときによくやりがちなのが…