(※写真はイメージ)
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朝倉祐介 シニフィアン株式会社共同代表兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
朝倉祐介 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。
村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。
小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。
小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。

 シニフィアンの共同代表3人による、日本企業における「取締役会について」をテーマにした床屋談義「シニフィ談」。(ライター:福田滉平)

●「取締役」は昇格じゃなくジョブチェンジ

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):僕は初めて上場企業の取締役になった時、いくつか取締役向けの講座を受けたことがあります。会社役員育成機構で役員教育に取り組んでらっしゃるニコラス・ベネシュさんが仰っていたことですが、取締役に就任する方というのは、組織の中でそれなりの実績を残されてきていることもあって、「新卒じゃあるまいし、今さら研修なんか受けられるか」といったマインドセットになっていることが多いと。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):それは少なからずあるよね。

朝倉:新卒研修であれば、新入社員はみんな何の疑問も持たずに、研修を受けるわけじゃないですか。でも取締役はそうじゃない。これについて思うのは、取締役という役職がサラリーマンとしてのキャリアの延長線上で連続的に捉えられているから、「俺、今までこんなに実績を残してきたのに、何を今さら学ぶねん」という心持ちになってしまうのではないかということです。
実際には、取締役というのは執行とは明確に役割が違う。執行役員から取締役への「昇進」というのは、ランクが上がるということではなく、ある種のジョブチェンジのはず。社歴だとか執行での経験は関係なく、真摯に学び直さないといけないと思うんです

小林:昔、大和銀行事件っていう監視監督義務違反を問われた事件があって、日本の取締役の位置づけを端的に示した判決文があるんです。裁判長はこういうことを言ってます。

「相手方らは(=大和銀行の役員陣)、…大企業の役員らの取締役の監視業務は、取締役上程事項に限るべきであるという」

小林:要は、取締役会に上がっていないことは管理責任の範疇外である、という被告側の主張。しかし裁判長はそれを次のように一蹴したうえで、厳しく取締役のあり方に突っ込んでいる。これがあまりに名文。

「しかし、そのように限局すべき根拠はない。なるほど、我が国の株式会社、大企業のいわゆる平取締役ないし、その監査役は、その大半が社内取締役ないし、社内監査役であり、これを従業員の年功功労報償的な地位におく運用が広く行われてきた。それは厚遇を受けながら、取り締まらない取締役、監査しない監査役として、業務執行者の盲検的追認機構と化しているのである。・・・(中略)・・・もとよりこのような現状を当裁判所も知らないではない。知らないではないが、そうだからといって、報酬のみを得て取締役、監査役として職務をとらない名誉職的ないし名目的な取締役に席を与えない法の主旨をないがしろにすることはできない。前示のような現状に容易に妥協して、前示の責任要件の解釈を曲げ、法の趣旨に反して取締役、監査役の形骸化に途を拓くことはできない」(強調は引用者)

小林:これは大阪地裁の判決なんですけど、日本って長らくこの状態だったと思うんです。 まさに、「取締役は執行役員の延長線上のゴール」みたいな感じ。

●『課長 島耕作』の罪

朝倉:取締役が、論功行賞的なご褒美の道具になっているんじゃないかと感じることが多々ありますよね。執行役員までならいいと思うんですよ。執行役員って、法的な制度でもないし、言うなればただの呼称なわけですから、名誉職的なご褒美として、どんどんあげればいいと思うんです。
だけど、取締役というのは法的に設けられた役割なんだから、それをご褒美にするのがおかしい。この点で、島耕作は罪深いと思うんですよ。

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『課長 島耕作』の罪