怒りのあまり、身体に変調を来すほどでした。

 彼は潔く会社を辞めようと思い、準備を始めるのですが、その過程で彼は幸運なことにキャリアカウンセリングを受けることができました。これが彼の人生の大きな転機になったのです。カウンセラーとじっくり話すうちに、一時の怒りに任せて無計画に会社を飛び出すようなことをして、自分の人生を無駄にしたくないと考えるようになりました。そして、自分はどういう自分でありたいのかを徹底的に考え、「弱い立場の人の味方でいたい」という結論に至ったのです。

 そもそも彼は営業として人と接し、人の心を動かすことに長けていました。彼は転職先を探していたのですが、そのタイミングで社内に新たな部署が立ち上がることがわかりました。ダイバーシティを研究し、実践する部門です。彼は興味を持ちましたが、「自分が異動できるわけなどない」と思いました。「ここで会社に留まるのはみっともない」とも悩みましたが、再びカウンセラーの助言もあり、さらにかつての部下の具体的な助けもあって、最終的に、新設されるその部門への異動を希望し、実現したのです。

 そんな彼はその後どうなったか?今は非常に生き生きとしています。しかも彼は徐々に社外にも人脈を作っていて、現在は65歳までの再雇用期間で給与も以前より下がっていますが、満足のいくサラリーマン生活をしています。

 しかも、彼はいささか遠くから通っているのですが、その自宅では、奥さんと2人で喫茶店を切り盛りしています。そこは彼が理想とする「人に温かいサロン」だということです。

●先駆者となってすっきりと「逃げ勝ち」を目指そう!

 以前にこの枠でも一度紹介した人ですが、会社に勤めながら、ファシリテーターの自己研鑽を積んだ人がいます。彼はある時、自分はこの会社では主流ではないと判断し、「負けず残り」も諦めました。

 そんな中で「自分の強みは何か」という自己認知をしっかりと行ったのです。彼はマーケティング分野のプロフェッショナルでした。そうした職種は、若いうちはいいのですが、ベテランになると、若い人の感性に負ける部分も出てきます。ある程度の年齢になると、多くの場合、自分は最先端にはいないということに気づかされるのです。残酷なものですね。

 彼は自分の得意分野はチームづくり、しかも専門家集団を前に向かせるように上手く誘導することだと思い至りました。しかもそういった分野のスペシャリストは心理カウンセラーやファシリテーターと呼ばれるもので、公的な資格もあるということがわかりました。

 しかも、今と違ってまだ日本では立ち上げ期でしたから、先行者利得の取れるトップランナーになれたのです。

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第2の人生にフェイドイン、第1の人生をフェイドアウトが極意