●日本の初任給は東大卒も三流大卒も一緒

 とはいえ、企業で初任給格差の見直しが画一的に進むのは、いいことばかりなのだろうか。大卒、高卒といった教育段階の学歴区分をベースに検証するのもいいが、同じ学歴区分ではどうなのか。たとえば、一口に「大卒」という学歴であっても「どのレベルの大学を出たか」という観点もあるはずだ。

「東大・京大卒は40万円、早稲田・慶応卒なら30万円、その他の大学は20万円」

 このように卒業する大学の偏差値によって初任給格差を設けている会社を、日本では目にすることがない。果たして、これは妥当なのだろうか。

 たとえばアメリカやイギリスであれば、大学卒であっても大学のレベルによって初任給が異なることは珍しくない。年収300万円からスタートする人がいる反面、ハーバード大やオックスフォード大を出たエリートなら、最初から年収1000万円もらえるかもしれない。MBAを取得するような優秀な人材であれば、大手の投資銀行やコンサルタント会社から誘われて、いきなり1500万円以上というケースもあると聞く。

 グーグルやアマゾンなど大手IT企業も、優秀なエンジニアの獲得のため、これと同水準の初任給を提示しているようだ。プロ野球ドラフトで上位指名される選手が、1億円前後の契約金をもらうのと同じような感覚と考えればいいだろう。

 もちろん、職種や地域、企業によっても異なるが、大学において入学から卒業までの努力を評価した「値決め」ということになる。これがアメリカやイギリスの常識。文句があるなら勉強して、難しい大学を卒業すればいいだけの話だからだ。

 ただし、新卒一括採用という習慣のない欧米諸国では、若者の失業率が極めて高いといった社会問題も存在する。新卒でも優秀なら高い値段で売れる反面、そうでない人は就職することすら困難ということだ。

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過去の「努力」「能力」が報われてもいいのではないか