3歳までに聞く「単語数」が語彙力を決める

 貧困層が通うプリスクールの教師のベティ・ハートは、4歳児の語彙力を向上させるべくあらゆる手をつくしましたが、望みはかないませんでした。

 彼女がカンザス大学の修士課程の指導教官トッド・リズリーと共に出した結論は「4歳では手遅れ」というものでした。

 2人は理由を知るために、42世帯の追跡調査を開始。2年6ヵ月にわたり、1ヵ月に1時間の頻度で、家庭内のすべての会話を録音してもらいました。

 録音テープは合計1300時間。書き起こすのに6年かかりました。

 ハートとリズリーは、裕福な親と貧困層の親の子どもとの会話の違いを分析する過程で、さまざまな角度から「会話の質」を研究しました。名詞と動詞を混在させているか?語彙のレベルは?前向きな会話か、ネガティブな会話か?

 その結果、最も興味深い変数となったのが「単語数」でした。

・生活保護を受けている世帯の子どもが聞く単語数は、1時間に「平均600語」。親が専門職に就いている世帯の子どもは、1時間に「2100語」。

・親が専門職の家庭の子どもは4歳までに「4800万語」の語りかけを受けている。貧困層の家庭の子どもは「1300万語」。これでは、貧困層の子どもは語彙力と会話の獲得に遅れが出て当然で、この差はのちの学習力に影響する。

・子どもが3歳の時点の言語能力から、9~10歳の言語能力は推測できる。

親がこれだけの語りかけをしている家は、子どものIQが高い

 語彙力とIQが高く、成績優秀な子どもに育てるには、どのくらい「たくさん」聞かせるべきなのでしょう?

 研究によると、そのために必要な単語数は1日2万1000語。1時間あたり2100語です。かなり手ごわく感じませんか?私も最初はそう思いました。

 でも、1時間2100語は、休みなくしゃべり続けなければならない分量ではありません。1時間に15分間おしゃべりしている程度の分量です。

(この原稿は書籍『いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる最高の子育てベスト55』から抜粋して掲載しています)