●合格者は旧帝大、早慶出身以外も

 実際の編入試験の選抜方法は二つに別れる。

 一つは、「書類審査(1次)+学科試験(2次)+面接(3次)」、もう一つは、「学科試験+面接」だ。近年は、後者の選抜方法が主流だ。

 ただし、前者の場合、「書類審査によって、学科試験の倍率が低くなる傾向があり狙い目」(別の大阪市の大手塾)という。

 そして、学科試験の内容は、「英語+生命科学」や「英語+理科(生物、物理、化学)」が多い。ここに一部数学が含まれる場合があるから注意が必要だ。

 英語の出題形式は長文読解問題が基本。問題文である英文は、医学雑誌などからの引用が多く、専門英単語を学ぶ必要がある。しかも、ほぼ記述式だ。時間の割に分量も多い。旭川医科大学、島根大、浜松医科大学などのように英作文を出題する大学もある。「これらの大学では点数差がつきやすい」(森課長)という。

 一方で生命科学の出題は、大学の教養課程で学ぶ内容で、高得点の受験者が多く、「点数差がつきにくい」(横浜市の医学専門予備校)そうだ。

「抜け道」であるとはいえ、これらの問題の難易度は非常に高い。実際、編入試験の合格者は、東大、京都大学などの旧帝大出身者と早慶など難関大学出身者が中心。そして、出題内容から理系出身が有利だ。

 しかし、森課長は「筆記試験の対策をしっかりやれば合格を勝ち取れる。実際、難関大学の理系出身者ではない、文系学部出身の合格者はいる」と力説する。

 医学部の編入試験は、5月から12月にかけて実施される。夏以降のこれからが翌年の試験への受験勉強のピークで、予備校側も医学部編入対策に力を入れている。

 例えば、河合塾KALSの医学部編入講座の場合、1年半のコースを開講している。費用は約90万~130万円で、授業は、現役の医師が受け持っている。さらに医学部の学生チューターが、個別カウンセリングを行う。

「センター試験の内容と感覚をまだ覚えている大学2年生までなら再受験を勧めます。3年生以上で英語や生命科学分野ができるなら大学卒業後の編入受験を考えてもよい。社会人は仕事を辞めず、働きながら通う人も多い」と森課長。

 最後に、編入以外の、初公開の裏技も紹介したい。実は、「医学部へ転部」という道もあるのだ(【図表3】参照)。ほとんど知られていない方法だが、今回、東海大と昭和大学の学生から内部情報を入手した。両大学のどこかの学部にとにかく入学して、学内でトップレベルの成績を取らないといけないが、一般入試で浪人し続けるより良い選択かもしれない。仮に転部に失敗しても、大学卒業後、医学部編入に再チャレンジすればよい。

 いずれにしても、学力だけでなく面接などでかなり高い医師としての資質も問われるのが編入試験だ。合格者には社会人として培った経験を生かすような医師になってほしい。