●仕事が速ければたいていのことは許される

けんすう:仕事が10あるうちの8サボっても、要点の2だけやっておくと大丈夫なものってけっこうあるじゃないですか。優秀な人は、力を入れるところと、そうでないところを区別して、傾斜をつけて仕事をしている気がします。

尾原:大事なのは、自分にしかできない2割を見つけること。ぼくの場合は、いろんなところからネタを拾ってきて、この事業だったらこれが使えますよとか、それは誰々さんがやっていたから繋ぎますよということでした。けんすうの2割は何?

けんすう:ぼくはみんながワーッと話したことを、いい感じの資料にまとめるのが実はすごい得意というか、好きですね。

尾原:たしかにまとめ能力高いもんね。けんすうを入れておくと、会議ではあんまり発言しないけど……

けんすう:いい感じに解釈も入れて資料をつくるから、結果として速いし、説得力ある資料になっている。それで生きていますね。

尾原:そうだよね、けんすうの資料は説得力がある。ブログの記事もわかりやすいし。

けんすう:あれを仕事でもやっていますね。

――自分にしかできない2割にうまく集中できればいいですが、たいていの人は残りの8割に全精力を注いで、仕事をした気になっている気がします。

けんすう:一番シンプルな手法が、同じ時間をかけて同じ仕事をするとしても、アウトプットを早くするという方法です。

 たとえば、会議で話していたことが、1時間後に資料ができていたら、わりと感動するじゃないですか。でも1週間たっていたら、「だよね」で終わってしまう。どうせ資料を作るなら、会議が終わったあと直後の1時間で超頑張ったほうが、1週間後に渡すよりも高い評価になります。

 そうすると、「あいつ仕事はやいぞ」みたいになって、さらに仕事が集まってくるので、よりスキルアップしやすいところはあるかもしれないですね。

尾原:それはすごくわかる。ぼくも、ミーティングを終わったときじゃなくて、ミーティング中につなぎましたとか、やっぱり速度がすべてを上回るところがあります。

けんすう:アウトプットが速ければ許されるということはけっこうありますよね。

尾原:速ければ、未完成でもみんなが足りないところを補ってくれる。何より、速くアウトプットを出すと驚きがあるので、驚きがあると、80点でも120点っぽく見える。

――私も初対面の人からライティングの仕事の依頼が入ったときは、著者の方やネタについてすぐに調べて、断る場合にもなるべく速く、できれば数時間以内にお返事をするようにしています。ただ忙しいから断るのではなく、理由をバーっと並べて、「この人でこのネタだとたぶんうまくいかない」ということを理路整然と説明する。「なんで断るのにこんなに調べてあるんだ」と相手はすごくビックリしますよね。そうすると、断っても信頼が貯まるんです。次はぜひ田中さんにやってほしいと言われて、実際、自分好みの話が舞い込むようになります。

けんすう:それ、すごい。頭いいですね。

――スピードは大事ですよね。そのかわり原稿が遅いところがなんとも……

けんすう:要点要点で速いと全部速いというイメージがあるので、原稿が遅くても、今度はクオリティを上げてくれているんだと思い込む。かしこいですね。原稿を速く書くのは大変じゃないですか。

尾原:でも、断る理由をパッと調べるのは、そこまで大変じゃない。

けんすう:どうせ断りますしね。けっこう気楽にできるというのもあると思うんです。

――もちろん調べてみて、これはおもしろそうとだと思ったら、やるわけです。

尾原:断るためだけにやっているわけじゃないですからね。初動で速く動くというのは大事ですね。そこで勝ちパターンをつくっておくと、あとが楽になります。(けんすう×尾原和啓)