●「怒れば社が嫌われる」という恐怖 「黙ってろ」と強要する上司も

 福田前次官の一件では、女性記者からの訴えをいったんは却下したテレビ朝日にも、批判が集まっている。被害を黙殺するようでは、セクハラ次官の(消極的ではあるが)支持者と言われても仕方がない。

 しかし、この資料を読めば、テレ朝の対応はマスコミ業界では決して珍しいものではない、ということがよくわかる。

「後日、上司に言ったら笑われて終わった」
「うまくいなしてネタを取ってこい、というのが社にも上司にもある」
「我慢しろ、かわせと教わったから、声を上げることができなかった」

 こんなことを言う人たちに囲まれれば、「怒れば社が嫌われる」と思い込み、ひたすら我慢する女性記者が続出するのも無理はない。

 Twitterで「セクハラ発言をした次官はバカだが、一種のハニトラのようにも思える」と持論を披露した百田尚樹氏のように、今回の事件を女性記者によるハニートラップではないか、と疑う人も一部いる。驚くべきことに、それを部下に要求するダメ上司もいるようだ。

「上司から『女を使ってネタを取ってこい』と言われた」

 一方、特ダネを連発する優秀な女性記者には、こんな言葉が贈られる。

「『女を使ってネタを取ってきている』と周囲に言いふらされた」

 訴え出るなんてとんでもない、むしろ女を使えと教え込み、優秀な業績を出せば「女を使っている」と後ろ指をさす…。確かにセクハラを仕掛けてくる取材先への怒りは大きいだろう。しかし、女性記者たちがもっとも怒り、失望しているのは、やはり自社に対してではないだろうか。 (ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)