●売りたいものを先に伝えてはいけない

 ちょっと想像してみてほしい。

 もし、あなたが、「ゴキブリ駆除製品」のセールス担当だとしよう。

 その製品は、ゴキブリ1匹を退治するばかりでなく、集団の巣まるごとを退治してしまう優れものだ。「集団まるごと退治」が、他社にないセールスポイントというわけだ。

 この製品をセールスする際に、セールスポイントは絶対に伝えなければならない。

 したがって、競合に先を越される前に、真っ先にセールスポイントを言いたくなる。

 ここが陥りがちな落とし穴だ。先の公式にあてはめよう。

・悪い例:先に「セールスポイント」を伝える。
・良い例:先に「困りごと」を投げかける。次に、「セールスポイント」を伝える。

 最新のCMから、具体例を見てみよう。商品はKINCHO(大日本除虫菊株式会社)のゴキブリ駆除製品「コンバット」だ。

 CMには、これ以上ない最適者がキャスティングされている。普段から「順番」を励行している林修、その人だ。

 CMは、30秒ほどだが「前半」と「後半」に分かれる。

 まずは、視聴者の困りごとを問いかけ、明らかにする。

 もちろん、セールスポイントには、前半ではご法度にしている。

 ここでは、「知ってます? ゴキブリは集団生活することを?」と投げかけている。(【図版1】)

 そして、いよいよだ。言いたくてしょうがなかったセールポイントの出番である。(【図版2】)

「知ってます? ゴキブリは集団生活することを?」と前半で投げかけた答えを、「この製品(「コンバット」)なら集団まるごと退治できるんです!」と後半戦で満を持して登場させているのだ。

 30秒の刹那に、妙に納得してしまうのは、林修氏のキャラクターに拠る部分もあるが、読者が再現すべくマネすべきは、伝え方の「順番」だ。

●6フレームは、伝え方の万能フレーム

 拙著『最強のコピーライティングバイブル』は、商品を売りたいマーケティング担当者やコピーライターに支えられ、有り難いことに重版を重ねている。

 その中で、「順番」について取り上げたのが、書籍の中で紹介する6(シックス)フレームだ。(【図版3】

 前半は、相手に寄り添い「控えめ」に書き出し、後半はセールスポイントを「強気に」踏み込んでいくのだ。

 まさに林修氏が演じたCMは、この順番を踏んでいる。

 普段のコミュニケーションで「伝え方」に悩んでいるのであれば、「順番」を意識してみると随分と伝わり方が変わるはずだ。

 より専門的に「伝え方」に責任を持つ経営者、マーケティング部署、広報部署、コピーライターは、拙著『最強のコピーライティングバイブル』のPART3「すぐ行動させる」の195~226ページを参照されたい。

 6フレームについての解説を複数の実例、効果付きで紹介しているので、すぐに現場で再現できるはずだ。

(横田伊佐男:CRMダイレクト株式会社代表取締役)