たまに母がデートで夜に家を空けることがあり、そんな日は作り置きの料理をレンジでチンする父がものすごく不機嫌そうで、父を少し不憫にも思いました。しかし元をただせば母の気持ちが離れたのも父の不貞が原因で、身から出たサビともいえます。私は父と母、両方の大人げなさを思うとともに、『大人だからといってずっと大人らしくちゃんと振る舞っていくことは難しいのかもしれない。彼らも一人の人間としていろいろ楽しみたいのだ』と考えるようになり、こんな言い方をすると偉そうですが、2人を心の中で許して受け入れることができるようになっていきました。弟ともそんな話をしたことを覚えています」

 “できた子ども”に許容されることで、Cさんの母は自由恋愛が暗黙のうちに認められる形となった。

「母があのタイミングで自由恋愛の宣言をしたのは、私と弟がある程度大人になって、『子育てに手がかからなくなったから』というよりは、『自分の価値観で私(母)のやり方を判断しなさい』ということだったのだと思います」

 そんなすったもんだがあったCさんの家庭だが、それから十年以上経った今では比較的平和だそうである。両親は離婚をせず、父も母もそれぞれ外に恋人はおらず、しかし母は気が向いたら恋人を作るかもしれず…といった状況らしい。

 雨降って地固まったのだろうか。自由恋愛を選択した母、それを黙認せざるを得なかった父、そしてそんな両親を受け入れたCさん姉弟、それぞれの葛藤や努力があって、現在の形に落ち着いたのは事実であろう。

 人は年を重ねるとともに老いを意識するようになる。子どもが成人前後の年齢に達したあたりのタイミングで、自分の老いを強く意識するようになり、またそれに抗いたく思う女性は多いはずだ。

 40~50代の妻が不倫を始める背景には、そうした要因が潜んでいるようである。

(藤井弘美:フリーライター)