●上下関係なく話ができ自分をアピールする機会にも

 雑談のもうひとつの利点は、上下関係を気にせず、縱横に話ができることだろう。あるいは、仕事では見えなかった一面を周囲や上司が雑談から見て取り、「この人は今の仕事ではパッとしないが、この話題についてこんなにユニークな知見を持っているなら、他の仕事をしてもらったら力を発揮するのでは」と期待してもらえるかもしれない。

 雑談のトピックへの感想や反応は、その人の能力、伸びしろ、人間性や知性の深さ、ユニークさを時として、仕事でのパフォーマンス以上に表すものだ。何も部下の立場の話に限らない。上司や上の立場にある人が、ありきたりの一般論や有名な評論家がどこかで言っていることをそのまま受け売りにした雑談ばかりしていたら、部下に見切られることもあるだろう。

 働き方が多様化し、社員がみんなで机を並べて仕事する環境は減っている。それに伴い雑談の時間も大幅に減っている。しかし、コミュニケーションは間違いなくビジネスの礎だ。私は、意味のある雑談と、そこから仕事のヒントをすくいとることを強く推奨する。ただし、なんでもやり過ぎはNGだ。勤務時間内では「さわり」だけにし、仕事が終わった後や外部の友人たちなどと本格的に意味のある雑談をたくさん楽しんでほしいと思う。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)