4)投球フォームチェックと「制御システム」

 ダルビッシュは自分なりの投球フォームのチェックポイントがあり、それと当日のコンディションを比較している。乖離している部分は、当日のピッチングフォームを微妙に変えて対応するというPDCAサイクルを持っている。

 過去には元巨人の投手の桑田真澄投手も全身10ヵ所以上のチェックポイントをもとに調整していたと言う。自分の中の標準値と今日のコンディションの比較による調整はビジネスにも必要なことだろう。

 ダルビッシュが採用している方法は、チェックののちにその日に合わせて「変える」という方法であり画期的である。多くの選手は、チェックをもとに、異常を感知したら「もとに戻す」というサーモスタット的な制御方法であるのだが、ダルビッシュは「感知したら、フォーム自体を変える」という制御システムである。これはシステムとしてはかなり危険な方法でもある。このような危険な方法を採用しながらも、長期にわたりトップで居続けられる「ダルビッシュ的制御方法」はいかなるものか、いくらでも話は膨らむ。

5)「市場適応の戦略」

 ダルビッシュは、高校時代は長身痩躯だったが、アメリカに渡った今は筋肉隆々だ。市場適応を目指して見事に身体の改造に成功している。そのため、ここ10年ほど、ストイックな食事制限をしているという。

 海外進出に合わせて身体の最適化をすることはとても難しく、失敗したスポーツ選手も多い。サッカーでは、イタリアのセリエAに移籍したカズこと、三浦知良選手は、当たり負けしないようにと、筋肉をつけて臨んだものの、逆に体重が増えてスピードが落ちてしまった。ゴルフの石川遼も米ツアーで活躍するために肉体改造に励んだが、その結果は出ていない。かたやイチロー選手は無理に筋肉をつけず、柔軟性を維持するという戦略で成功した。

 外部の市場適応のために自らの武器を最適化しようとすることは重要だが、その最適化のための方法論については、スポーツ選手からいろいろ学ぶことができる。

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