●ネット上に氾濫する情報を検証してみると…

 まず、補助金ありきで代理店やコンサルティング会社が暗躍したという説。これは、各地の地方創生プランにありがちな失敗の構図だ。テンプレート化した企画書によってハコモノ予算を設計し、補助金や助成事業の指定、採択を受ける。施設をつくり、イベントなどを開催するが、助成期間の終了とともに運営が立ち行かなくなるパターンだ。イベント等で一時的に盛り上げても、地域の産業基盤の強化や観光資産の強化につながるとは限らない。今回のシナリオもこうした事例に当てはまりそうだ。

 しかし、下町Pが受けた補助金は「JAPANブランド育成支援事業」の2013年から2015年の3年間のみ。下町Pの活動は2012年からである。最初の1年ほどは、寄付以外の公的な補助は大田区からのものだった。流れとしては、区の補助が切れる2013年に、JAPANブランドに申請した形だ。なお、この間も含めて現在まで、下町Pがコンサルティング会社や代理店と契約したことはないということが大田区産業振興協会への取材で明らかになった。

●6000万円とも言われる補助金、実際はいくらだったのか

 JAPANブランド育成支援事業は、もとは中小企業庁が委託事業として実施していたものだが、2011年に国(経済産業省)の補助金事業として実施されている。執行される予算は、最大で2000万円(単年度)。最長で3年までの事業支援が認められ、下町Pは3年採択事業になっている。先の補助金6000万円というのはこの数字と思われるが、すべての事業が申請どおり、最大金額で認められるわけではない。下町Pの場合、3年間のうち満額が執行されたことはないと関係者は語る。そして一般論だが、採択が複数年にわたると前年より増額されることは少ない。

 補助金以外の活動資金は地元企業や有志による寄付とスポンサー企業からの資金であり、こうした寄付金は公開されている。2012年から18年の6年間で327件、2994万1411円(2018年2月7日現在)だ。1年あたりおよそ500万円程度になる。活動資金でいちばんのウェイトを占めるのはスポンサー企業からの資金提供だ。年間で合計1000万円~数千万円規模だという。下町Pホームページに表示されているスポンサー企業はひかりTV(NTTぷらら)、ANA、伊藤忠商事、東芝の4社。ひかりTVは番組コンテンツの提供について契約を結んでいるものと思われる。ANA、東芝は地理的に大田区とも縁の深い企業だ。ANAはボブスレーの空輸に関してノウハウを持っており、旅客輸送以外のアピールになるだろう。

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そもそもこのプロジェクトは何を目指していたのか