アドラー心理学を説いた『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』と、『君たちはどう生きるか』には多くの共通点がある
アドラー心理学を説いた『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』と、『君たちはどう生きるか』には多くの共通点がある
柿内芳文(かきうち・よしふみ) 編集者。1978年東京生まれ。2002年光文社に入社し『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(山田真哉)などを編集。2010年星海社に移籍し、編集長として「星海社新書」を立ち上げる。その後フリーランスとして『ゼロ』(堀江貴文)、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(岸見一郎、古賀史健)などを編集。2013年にコルクに合流し『インベスターZ』(三田紀房)、『漫画 君たちはどう生きるか』(吉野源三郎、羽賀翔一)などを担当した後、2017年10月に独立。
柿内芳文(かきうち・よしふみ) 編集者。1978年東京生まれ。2002年光文社に入社し『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(山田真哉)などを編集。2010年星海社に移籍し、編集長として「星海社新書」を立ち上げる。その後フリーランスとして『ゼロ』(堀江貴文)、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(岸見一郎、古賀史健)などを編集。2013年にコルクに合流し『インベスターZ』(三田紀房)、『漫画 君たちはどう生きるか』(吉野源三郎、羽賀翔一)などを担当した後、2017年10月に独立。
古賀史健(こが・ふみたけ) ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。現在、株式会社バトンズ代表。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』および『幸せになる勇気』の「勇気の二部作」を岸見氏と共著で刊行。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がある。
古賀史健(こが・ふみたけ) ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。現在、株式会社バトンズ代表。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』および『幸せになる勇気』の「勇気の二部作」を岸見氏と共著で刊行。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がある。
岸見一郎(きしみ・いちろう) 哲学者。1956年京都生まれ、京都在住。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。世界各国でベストセラーとなり、アドラー心理学の新しい古典となった『嫌われる勇気』執筆後は、アドラーが生前そうであったように、世界をより善いところとするため、国内外で多くの“青年”に対して精力的に講演・カウンセリング活動を行う。訳書にアドラーの『人生の意味の心理学』『個人心理学講義』、著書に『アドラー心理学入門』『幸せになる勇気』など。
岸見一郎(きしみ・いちろう) 哲学者。1956年京都生まれ、京都在住。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。世界各国でベストセラーとなり、アドラー心理学の新しい古典となった『嫌われる勇気』執筆後は、アドラーが生前そうであったように、世界をより善いところとするため、国内外で多くの“青年”に対して精力的に講演・カウンセリング活動を行う。訳書にアドラーの『人生の意味の心理学』『個人心理学講義』、著書に『アドラー心理学入門』『幸せになる勇気』など。

「心理学の巨人」アルフレッド・アドラーの考えを広め、168万部を越す大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』。そして、児童文学者の吉野源三郎によって書かれた原著を漫画化し、あっという間に95万部を達成した『漫画 君たちはどう生きるか』。
なぜいま、これらの本が人びとの心を捉えるのか? 『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の共著者である岸見一郎氏と古賀史健氏、そして『漫画 君たちはどう生きるか』含めこれらすべての編集を担当した柿内芳文氏とともに、ベストセラーの共通点を探った。(構成:田中裕子、撮影:山本純子)

●時間をかけて生まれた「生き方を問われる」2冊

──『嫌われる勇気』の年間ベストセラー4年連続トップ3入り(ビジネス書)は史上初の快挙とのこと、おめでとうございます。そして今年8月に発売された『漫画 君たちはどう生きるか』も、100万部を目前にしています。今日はこの2冊のベストセラーの共通点を探っていきたいのですが、まず驚くことに、両方とも柿内さんが編集のご担当ですね。

柿内芳文(以下、柿内) ありがとうございます。編集者として共通点を考えてみると、この2冊とも、普通の本ではあり得ないくらい制作に長い時間をかけました(笑)。『嫌われる勇気』は足かけ3年、『漫画 君たちはどう生きるか』は2年半もかかっていますから。でも、ものごとの本質が書かれているから、ネタの新鮮さにこだわる必要はまったくなかった。両方とも、作者の皆さんと熟考してつくることができました。

──その結果か、『嫌われる勇気』も『漫画 君たちはどう生きるか』も、読んだ後に人生が変わるような、そして折に触れて読み返したくなるような強烈な読書体験が支持されています。

岸見一郎(以下、岸見) 古代ギリシアの哲学者、ヘラクレイトスは「同じ川に二度入ることはできない」という言葉を残しています。絶え間なく流れる川は常に姿を変えるし、足を入れる自分もまた前とは違う自分である、と。『嫌われる勇気』も同じです。この本は長く売れているだけでなく、長く読んでいただいている本だと感じています。なぜかというと、読むたびに新たな発見があるから。知識を与えられる本ではなく、生き方を問われる本だからです。
 発売から4年、著者である私も何度となく読み返していて、そのたびに「こんなことが書いてあるのか」と気づきがありますよ。

古賀史健(以下、古賀) ああ、わかります。僕は毎年ドストエフスキーの五大長編を1冊ずつ読み返すようにしているんですが、読むたびに肩入れする登場人物が変わるんですよ。『悪霊』で言えば、はじめは主人公の悪魔的な青年スタヴローギンにあこがれていたのが、最近は時代に取り残されるおじさん、ステパン氏に共感するようになった(笑)。
『嫌われる勇気』も、はじめは青年に肩入れして読んで、いつしか哲人目線で読んで……と変化していくおもしろさがあると思います。『漫画版 君たちはどう生きるか』にもコペル君とおじさんという魅力的なキャラクターが登場しますが、読むタイミングによってどちらに肩入れするか変化するのではないでしょうか。

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