●シナリオ3 全面非核化は断念し開発凍結などの妥協を模索

 米国の一部、主として前政権の民主党関係者の間には、北朝鮮の核開発を止めることはできず、現状で凍結させるべきとの主張がある。韓国にも、北朝鮮は非核化には応じないので、核は現状で凍結してICBMの開発を止めさせることができれば、米国にも妥協の余地があろうとの主張がある。

 別の視点から、「トランプ大統領は実業家であり、最初は交渉戦術として強い姿勢を示すものの、最終的には交渉によって最も有利なところで妥協を図る人だ」との見方もある。

 しかし、こうした「現状凍結・追認案」の欠点は、北朝鮮が核ミサイルの完成までは開発をやめないとの現実を無視していることである。北朝鮮が仮に対話に応じてきても、これまでの交渉がすべて失敗に終わったのと同様、"時間稼ぎ"のために行っているのである。

 その時には、日米韓の側が、制裁を大幅に緩和するなどの大きな代償を求められ、結果的に北朝鮮の核ミサイルの完成を"手助け"したことになると考えておかなければならない。

 われわれが肝に銘じるべきことは、「北朝鮮はこれまで約束を守ったことがない」という事実である。そして、合意検証も北朝鮮の妨害に遭ってきたということである。そんな北朝鮮は、次々に挑発や要求を高め、最終的には在韓米軍撤収、韓国の赤化統一を模索するだろう。

 このシナリオは、一時的には戦争被害を避けることができるという意味で、好意的に考える人はいると思う。だが、中長期的に見れば、金正恩委員長の絶大な影響力の下に置かれるという意味で最悪のシナリオかもしれない。

●シナリオ4 武力で金正恩政権を消滅させる

 これは、北朝鮮を非核化させるための最も確実な方法である。クリントン大統領時代に一度検討されたが、米韓が北朝鮮を攻撃すれば報復を受け、韓国の首都ソウルは軍事境界線と近いだけに、首都だけで数十万人の犠牲者が出るとして断念した経緯がある。

 北朝鮮の核ミサイル開発が完成間近まで進んだ現在では、仮に核弾頭を搭載した弾道ミサイルが東京に着弾すれば、最大200万人の犠牲者が出るという推計もある。したがって、日本としても絶対に避けなければならないシナリオである。

 そうした中でも、米国は軍事行動を取る可能性はあるのか。以前、マティス国防長官が「ソウルの犠牲を大きくしない方法はある」と述べたことがある。トランプ大統領は「北朝鮮を完全に破壊する」と述べた。

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気がかりは偶発的な出来事による軍事衝突