カジュアルな洋食と和食をミックスしたメニューが一般的な「ファミレス」のそれだとすると、「サイゼリヤ」は価格こそ安価なものの、メニュー構成はイタリアンレストランだ。

 中国での「サイゼリヤ」のポジショニングは、まさにカジュアルなイタリアンレストランであって、「ファミレス」ではない。

 事実、日系であることを大きく謳っているわけではないため、顧客の多くは日本企業であることすら知らないのだ。

 2.価格戦略

「サイゼリヤ」の成功要因として、絶対的な条件の一つが「価格戦略」であったといえる。

「サイゼリヤ」が進出する前の中国は、洋食であれば何でも中華料理よりも割高なのが当たり前の世界であった。

 その常識を打ち破り、「サイゼリヤ」は、当時大人気だった「ピザハット」の半額以下で「ピザ」や「手羽先」が食べられるレストランとして地位を確立していった。

 結果、イタリアンは中国人にとっても手の出しやすい、より身近な料理となり、裾野が大きく広がった。

 このことは、「サイゼリヤ」の中国の食文化に対する大きな貢献だったと筆者は分析している。

 3.現地化

 飲食店の海外進出において、現地化は必要でありながら、かつデリケートな問題である。

 変えるべき点、変えてはいけない点を見極めるのは非常に難しく、味の現地化は、元々の料理の特徴を消してしまう可能性を抱える、諸刃の剣の側面を持ち合わせている。

 サイゼリヤの場合、ピザ生地に代表される、完全に現地の嗜好に合わせ対応したものがある一方、実は多くのメニューは日本のそれと、味も基準も変えていない。

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